永住資格取得増える=長野県内で日系ブラジル人=3年間で倍増=帰国しても職なく=子供母国語話せず=外国人登録は減少傾向

ニッケイ新聞 2008年5月14日付け

 【信濃毎日新聞】長野県内で永住資格を取得する日系ブラジル人が増えている。法務省によると、二〇〇三年末で九百三十九人だったのが〇六年末は千九百二人と三年間で倍増した。全国でも増加傾向だ。入管難民法改正で特例的に日系人の就労や定住が認められ、滞在が長期化。帰国しても就職の見込みがなかったり、子どもが母国語を話せなかったりする現実が背景にある。
 上水内郡飯綱町で暮らす機械整備士の渡辺ルイスさん(41)は日本への帰化手続きによる国籍取得を決意し、昨年から準備を進める。一九九〇年、サンパウロ市から二年のビザで来日。当初はしばらく稼いで帰国するつもりだったが、本国は失業率も高く、ビザの更新を重ねた。その後日本人女性と結婚。今では小学四年生の長男ら三人の子がいる。「子どもはポルトガル語を話せない。ブラジルで暮らすのは無理」と話す。
 九三年に出稼ぎのつもりで来日した上田市の派遣社員、尾崎ジョルジさん(48)も九八年に永住資格を取得。「日本で働いた方が安定して収入を得られる。二、三年ごとのビザ更新に費用と手間もかかり面倒だった」。来日時、一歳と零歳だった長女、長男はどちらも高校生に。「子どもは自分を日本人だと思っている」と言う。今帰国しても再就職の保証はない。子どものためにも自分のためにも帰化手続きを考えている。
 一方で、法務省によると、外国人登録をしている長野県のブラジル人は、二〇〇〇年末の一万九千九百四十五人をピークに減っており、〇六年末は一万六千六百九十六人となった。日本経済の低迷が影響しているとみられる。
 こうした状況の中で永住資格取得者が増えていることについて、上田市市民課で日系人の生活相談をしている堀之内テレーザ文子さん(53)は「本国より整った教育環境や治安のよさも理由の一つ」と説明する。自らも日系三世の夫とともに永住資格を取得。「近くにブラジル人学校があってもあえて地元の学校に子どもを通わせる親も目立つ」と、永住志向の広がりを感じている。