コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月21日付け

 「カミーニョ・ド・インペラドール」―昔の日本人には畏れ多い名称。サンパウロ市がおこなうリベルダーデ景観整備プロジェクトのことだ。命名したブラジル人にとっては「皇帝のように堂々と進むべき〃道〃」ほどの感覚であろうか▼総予算五千五百万レアル、巨額である。だから、命名に気負いも感じられる。工事は十期に分けられ、一年半で完成の予定。プロジェクトのグランドデザイン(全体構想)は、建築家M・ルピオン氏が描いた。十七世紀の日本、中国、韓国の情緒があふれる、統一感のある景観を出現させるという。楽しみだ▼さて、その後のことである。東洋街は現在、お世辞にもきれいとはいえない。各種店舗、公的建物の景観はともかく、舗道は壊れ、ゴミが多く、不潔だ。危険ですらある。普通に歩いていても躓(つまづ)く。タイルがはがれ、穴ができても放置されているからである。おそらく、舗道に関してはサンパウロ市内でも最も汚いほうにはいるだろう。管理が行き届いていない▼市内にはきれいな商店街がいくつかある。例えばイタイン・ビビ地区は、汚すのが恥ずかしいくらい整然としている。住人や商店主、また歩行者も買い物客も民度が違うと思うほどだ▼「カミーニョ・ド・インペラドール」が終了したあと、管理を怠れば、東洋街はすぐさま現在の状態になるのは目に見えている。管理者の所在をはっきりさせ、汚した者、壊した者への罰則をきびしく設けるくらいにしないと景観は保てない。(神)