コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月27日付け

 ミャンマーといえば「ビルマの竪琴」であり、映画の「戦場に架ける橋」がある。フランスの作家の小説「クワイ河の橋」を映画化しウイリアム・ホールデンが出演する画面で大活躍するのが、早川雪洲であり、あの名演技は忘れられない。今はサイクロンで大騒ぎしているけれども、あの国の歴史を紐解くと、いつも政治に軍が関与し安定した社会が出来ていないの印象が強い▼経済的にも不安定で銀行預金者による預金取り付け騒ぎが起き、燃料の値上げに端を発した佛教僧侶による反政府デモは数万人に膨れ上がったし、ジャーナリスト長井健司氏が死亡するという事件もある。国連からは後開発途上国に認定され、1人辺りGDPは230ドルと低い。民主化運動では1000人規模で虐殺されるなど人権抑圧も目立つ▼議会も閉鎖されたまま。90年の総選挙では、アウン・サーチー女史が率いる「国民民主同盟」が、総議席485のうち81%に達する392議席を獲得したのに政府は、これを認めず国会も開かれていない。このように民主国家とは遠い国に対して米英豪は経済制裁に踏み切り、日本も経済協力に実施を見合わせている。こんな厳しい国際状況のなかでのサイクロンの大災害である▼死者や不明など基本的な情報もミャンマーの軍事政権と国連の数字では大きく異なる。世界からの救援物資や救助隊員の受け入れにも軍事政権は拒否であった。痺れを切らした 国連事務総長が乗り込み元首タン・シュエ議長に強談判し、やっと援助隊を入国させることで合意したけれども、ミャンマーはもっと開かれた国にする必要がある。(遯)