カブキ・ロック「雅」世界ツアー=日本人歌手にブラジル人大騒ぎ=文協大講堂が興奮の渦に=「マワル~」日本語で大合唱

ニッケイ新聞 2008年5月30日付け

 日本の人気ロック歌手、雅(miyavi)の世界ツアーの一環として、サンパウロ市で二十三日、二十四日にコンサートが行われ、文協大講堂が非日系の若者に〃完全占拠〃された。
 大人百レアル、未成年五十レアルという文協を会場に行われたコンサートでも最も高額に属するチケットが、二十四日の分は二週間前に千二百全席が売り切れていた。
 いい場所をとるために水曜日から文協前歩道に寝泊まりして待っている若者までおり、二十三日も金曜晩に関わらず八百人が集まった。遠くはブラジリア、リオなどからも熱烈なファン(〃仔雅〃と呼ばれる)が駆け付けた。大半が非日系の中産階級で、十代後半の若者だった。
 当日は舞台に近い前半分に立ち見の仔雅が集まり、始まる前から「ミヤヴィ―――ッ!」と大声援を送る。舞台に雅が現れ、一曲目が始まると耳が痛くなるほどの大歓声が上がった。
 雅が英語で一言叫ぶと即座に大歓声が上がった。二十六歳の日本人青年を見るために、これだけの非日系があつまる光景はかつて文協ではなかった。
 パンクやハードロック調を強く出しつつも、ラップ、和太鼓、タップダンスなどの要素が混ざり、独特の和風世界を展開。衣装も歌舞伎調、ギター奏法も三味線風を取り入れ、白塗りの女装した姿は「ジャパニーズ・カブキ・ロック」和風歌舞伎ロック)を体現していた。
 ショーの最後には、「マワル~、マワル~、世界ハマワル~ッ」と日本語の歌詞で会場中が大合唱の渦になり、時代の変化を感じさせる一場面をみせた。雅が、中央部分がハート形になったブラジル国旗を抱きしめると、観客の興奮は絶頂に達した。
 約二時間のショーの後、観客の一人レベッカ・ボナウジさん(16)=サンパウロ市在住=は「キレイ、すごい、最高。泣いちゃったわ。全てがいい。すぐにまたブラジル公演してほしい」と上気した様子で語った。
 二年前からファンだというデボラ・フロレンシオさん(18)は「かっこいい、誰とも違う、しかもジャポネースよ」と魅力を語る。「雅が好きだから、今の彼氏も日系人を選んだの」と笑う。「すぐ家に帰らないと」とサンジョゼ・ドス・カンポス行きのバスに乗るべく、ターミナルに向かった。
 この非日系若者たちはインターネットで雅の存在を知り、ファンになっている。新聞やテレビ、ラジオでもない、新しいメディアの影響力の台頭はすさまじい勢いだ。
 公式サイトによれば、今回のショーは世界ツアーの一部だ。米国四カ所から始まり、チリの次にサンパウロ市文協公演、続けてドイツ、オランダ、英国、フィンランド、台湾、韓国、中国などを回る予定。ブラジルでの興業主はヤマト・ミュージック・ステーション。