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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年6月5日付け

 俗に〃秘密結社〃などと形容されることの多いフリーメイソンから、日系社会がオメナージェン(顕彰)されるというのは、なにか不思議な感じがする。西洋社会の奥深い部分に、百年を経過して、ようやく仲間入りをし始めたということなのだろうか▼昨年末にはリベルダーデ区サンジョアキン街のメトロ駅そばのグランド・ロッジ(dependencias do Palacio Maconico)から、この五月には文協ビル近くのサンパウロ大東社(Grande Oriente de Sao Paulo)から顕彰された▼特にこの大東社の儀式は実に秘密めいたものだった。薄暗い中を、左右から剣を振り上げて頭上で交差した下をくぐり抜け、奥の壁には三角形の中に目玉が描かれたメークが光っている。会員は三十代以降の男性で、みな黒い背広にエプロンのような独特の衣装を重ね着している▼儀式が始まる前、そこの幹部から聞いた「戦争中には、この建物の中で日本人だけで日本語で活動を行う支部があった」という話は特に刺激的だった。おそらく当時、サンパウロ市に住んでいたコロニアのインテリ層や実業家二十数人が加わっていたようだ▼場所が場所だけに、後の文協創立メンバー、もしくは負け組の幹部らは、その関係者だったかもしれないとの推測も浮かんだ。もしそうならコロニア裏面史への入り口の扉かもしれない▼日本でのフリーメイソンはマッカーサー元帥が創立というので、コロニアの方が早かったともいえる。しかも、日本以外で日本語による活動をしていたというのは世界的にも数少ないだろう。いずれにしても、一つの歴史がここに秘められている。(深)

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