コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年7月4日付け

 アルジャ市の日系人からいい話をきいた。日本移民百周年を記念して、市に桜並木を寄贈したという▼同市は、近年〃別荘族〃を含め、日系人が増えている。二百五十家族、千人以上ではないかと推定される。文協も以前、主に一世が役員会を構成していたが、高齢化で人数を減らしてきて、二世、三世に運営をそっくり任せる話も極く近い将来、具体化しそうだ。一世、二世双方がその気になっているようだ。歴史の新しい文化祭りも活性化している若い層の企画運営である▼桜並木づくりは、百周年を迎え形あるものを贈りたいという日系人側の意向と市側の要請がぴったり一致して、先月初旬、行われた。市内の道路駅から毎年花祭りが開催されている会場に向う街道沿いに四百二十本のヒマラヤ桜の苗木を、八メートル間隔に植えた。苗木代は日系人有志の寄付だった▼さっそく、市が苗木の周りに小柵を設け、グァルダを夜間にもつけて、引っこ抜きなどを監視している。順調に育てば三年後には花をつけ出すだろうといわれている。「花の里」にさらに「花」が加わるのである▼この事業のすばらしさは、団体としての文協でなく、在住日系人に呼びかけたところ、有志が積極的に応じたことだ。よその町ではあまり見られない。文協の構成員であるなしにかかわらず、本来なら、ノンポリ(本来の意味は政治に関心を示さない人たち)のなかにこうした協力者がいるというのは、なにか潜在的なエネルギーを見ているようで心強い。(神)