コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年9月3日付け

 JALが百周年と日伯路線就航三十周年を記念飛行で祝うというのは悪くないアイデアだ。これを聞いて思い出したことがある。以前からコロニアでは言われてきたが、航空会社や海運企業などの運送業界は、ぜひとも日本語書籍や日本文化を紹介する外国語書籍などをできるだけ安価で運んで欲しい。もしくは、無料にできるように日本政府は支援してほしい▼人文研の宮尾進元所長によれば、ルフトハンザ航空はドイツ語書籍を無償で運び、外国にすむ子孫が安価に独文化に触れられるように計らっているとか。外国に運ばれてくるのは、荷物ではなく〃文化〃なのだ▼いまほどブラジルで日本文化が注目されている時はない。世界に冠たる良質な書籍が日本で出版されていても、世界に流通しないのではもったいない。輸送ルートというネックをなんとか越えられないのか。美しい日本語書籍が豊富にあるだけで日本語教育にも強力な助っ人だ▼放っておいてもインターネットを通じてマンガやアニメなどの日本のサブカルチャーは入ってくるし、NHK国際放送も日本文化普及に大きく貢献している。でも、このままサイトからダウンロードして読むEブックの時代になっていくのはさびしい気がする▼日本が世界における存在感を拡大するためには、まず日本文化を広めて地固めをする必要がある。二十万人ものバイリンガル日系人がいるブラジルは、その試験的な試みをやるには売ってつけだ。親米派を世界に広げてきたハリウッド映画のような効果だ▼まずは、安価に〃文化〃を運ぶ試みをやってみてはどうだろう。もちろん、マンガもその一部だ。 (深)