トロピカリズモから40年=「良い機会」と翻訳の前田さん

ニッケイ新聞 2008年9月4日付け

 一九九八年に出版されたカルロス・カラード著「トロピカリア―ブラジルに沸き起こった革命的音楽の軌跡」を翻訳した前田和子さんが、八月二十六日に来社した。
 〇六年に日本で翻訳、出版された。一九六七年にブラジルに沸き起こった芸術活動「トロピカリズモ」を、写真を使ってドキュメンタリー風に仕立てた一冊だ。
 トロピカリズモの音楽分野に焦点を当て、その中心的存在だったジルベルト・ジルやカエターノ・ヴェローゾ、ナラ・レオンを追っている。
 前田さんは、「トロピカリズモはブラジル文化の根底にある真の姿を、庶民の目から見た活動」と位置付け、「現在のブラジルを理解するのに(トロピカリズモを知ることは)とても大きな役割を果たすのでは」と話した。
 トロピカリズモは、当時のブラジル軍事政権から左翼的な反政府主義活動とされ、ジルベルト・ジル、カエターノ・ヴェローゾの投獄、ロンドンへの亡命で終焉した。
 一年二カ月しか続かなかったトロピカリズモが終わった年から四十年目の今年、前田さんは、「今だから、他に見えてくるものがある。四十年目の今年はトロピカリズモを知るいい機会」と話した。
 翻訳版「トロピカリア」(プチグラ出版、〇六)は、リベルダーデの太陽堂、フォノマギ竹内書店、カーザ・オノで三十八レアルで購入可能。
 前田さんは、慶応大学英米文科を卒業後、ソロカバ大学で一年、上智大学大学院(修士)でポ語を学んだ。その後、サンパウロ・カトリック大学大学院で言語学博士号取得、早稲田大学やJICAなどでのポ語教師経験を経て、現在埼玉学園大学で南北米文化論の講師、翻訳・通訳家。