パリでデカセギが謎の死=日本行き2度乗れず警察へ=錯綜する情報、不信がる遺族

ニッケイ新聞 2008年9月4日付け

 デカセギのため、フランス経由で日本に向かった日系ブラジル人のオスカル・コダマさん(28、パラナ州マリンガ出身)が、乗り換え先のパリ市内の病院に搬送され、まもなく地元警察により死亡が確認される事件があった。四日、ブラジルメディアがその不思議な死亡経緯について、一斉に報じた。
 報道によれば、コダマさんは先月二十九日、パラナ州のロンドリーナ空港からグアルーリョス空港へ向かい、同日TAM機でパリへ。三十日午後三時ごろにパリの国際空港に到着、同日夜のANA便に搭乗したが、離陸間際に何回か吐くなど気分が悪くなり、機長の指示を受けて、搭乗を見送ったとされる。
 コダマさんは空港内の救急診療所で一夜を過ごし、翌日、再度日本行きの飛行機に搭乗した。しかし、再び同じように気分が悪くなったことから、航空関係者は、コダマさんのその行動を、〃搭乗不適応〃として不審に思い、警察に通報した。
 一部報道では、コダマさんは警察の事情聴取を受けた後パリ市内の精神病院に搬送されたが、病院到着時にはすでにコダマさんの死亡が確認されたという。コダマさんが警察に通報された理由について、麻薬の国際的な密売人としての疑いをもたれた、との報道もある。
 コダマさんの死体解剖は、パリの警察当局によって行なわれ、死因結果の発表は一週間ほどかかる見通し。ブラジルへの遺体搬送は今後、四十日から四十五日ほどかかるという。
 死因について、一部のブラジルメディアでは、地元警察当局は、肺に血栓が詰まって死亡する肺血栓塞栓症と見ているという。しかし、コダマさんは健康上の大きな障害を抱えておらず、また、遺族のコメントから、コダマさんは副腎の腫れを抑える薬を二つ常飲していただけで、搭乗時には良好な健康状態だったはず、とする報道もある。
 この経緯について、ブラジル外務省を通じて遺族に連絡があったのは、九月二日。遺族はコダマさんの死亡原因とともに、パリの関係当局に対し、強い不信感を抱いているという。
 コダマさんはデカセギ前、営業マンとして仕事をしていた。ブラジル外務省はこの事件を現地の在パリブラジル総領事館を通して調査していく方針という。