コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年9月12日付け

 グルッポ・サンセイの「マツリダンス」を中心になってやっているのは日系の若者だが、参加者の方は非日系人が主体といって良い。珍しいタイプの活動だ▼今までの日系団体の活動のほとんどは、日系人が日系人に働きかける、見せる、伝えるという方向性だった。最初から非日系をも含めた志向性を持ち、日本文化を受け入れやすくした日系文化を提供するという活動は聞いたことがない▼その場に居合わせて不思議だと感じるのは、演奏されている曲が日本語の歌謡曲であるという点だ。ブラジル人の踊り好きは国民性といっていい。ただの日本語の歌謡コンサートであればこんなに来なかったであろう非日系が、踊り目当てに集まってくる。その嗜好の隙間に、上手に日本文化を挟み込んだ▼伝統文化への敬意を示すために、グルッポ・サンセイはマツリダンスに二つの約束事を作った。「伝統的な盆踊りの振り付けを二つは入れること」「始める前に、伝統的な盆踊りを三十分以上やること」。これは日系文化といってもいい。このまま形を修正し続けながら、何世代でも続いてほしい▼重要なのは、若者の中に日本に友好的な心情を育てること、日系人が中心になった活動を継続することではないか。日本語が分からないと参加できない敷居の高いものではなく、間口を広くして多くの人を引き寄せ、気が付いたら日本文化、そして日本語にも興味を持っていた、という仕組みをつくることが肝要ではないだろうか。その意味で、マツリダンスは若者にとって実に敷居が低い▼サンパウロでもこのような活動を取り入れるところが、もっとあっても良いと感じた。(深)