「ちゃんとした日本人にならなくちゃ」=東京農大から実習生8人=ブラジルを肌で感じた1カ月

ニッケイ新聞 2008年9月20日付け

 東京農業大学国際バイオビジネス学科二〇〇八年度南米実習生の八人が、約一カ月の農業実習を終え、今月四日に帰国した。帰国日の午前中、サンパウロ市のブラジル東京農大会(大島正敬会長)会館で報告慰労会が行なわれ、生徒一人一人が、日に焼け充実した顔でそれぞれの収穫を報告した。
 十二年前から実施されている同実習は学科カリキュラムの一部で、単位に加算されるもの。
 今年来伯した実習生は、雨森ちなみ、新井郁美、新井美帆、面川常義、兼子翔、土田雄一郎、増田哲郎、S.Fさんの八人。滞在中はブラジル国内、一人はパラグアイの農家に住み込み、収穫作業や大規模農園の視察、講義などの毎日に明け暮れた。
 報告会で、ミナスのブラジル人のコーヒー農園で実習をした兼子さんは、コーヒーの収穫作業を「気の遠くなる作業」。だが労働者を敬う気持ちが生まれ自分の虚弱さを知ったという。「日本では大学へ行くのが当たり前だがブラジルではそうじゃない。自分の置かれている環境を有難いと思いしっかり勉強しようと思う」
 Fさんは、葉野菜を主に扱うミナスの村岡農場で収穫・運送・フェイラ販売をした。「頭で考えるより実際見て聞いて触るのは本当に大切だと感じた」とまとめ、コロニアに対しては「僕たちが無くしたものを持ってる。ちゃんとした日本人にならなくちゃと思った」と感想を述べた。
 パラグアイのイグアスで他民族コロニアの農場も視察した面川さん。「日本にいては分からないことが見えて、それだけで今実習は有意義だった。もっと勉強して納得できるようになったらまた来たい」と力強く話した。
 先月一足先に帰国した引率者の新部昭夫教授は、「毎回学生たちは人が変わるほど強烈な印象を受け、自信に満ちた表情になって帰ってくる。たった一カ月だが人生でもっとも忘れられない経験になるんでしょうね」と笑みを見せ、「国際化が進む今、世界市場を視野に入れた農業を学んで欲しい」と希望を話していた。
 同大学二十三学科の実習生をばらばらに受け入れている農大会。副会長の沖眞一さんは「大変ですよ。でもその為の会館。実習の中でワンダフルと肌で感じてくれればいいな。そして恩や学んだものを後輩たちに引き継いで欲しい」と目を細めた。
 報告会後、昼からは、OBの沖副会長、下條昭弘財務理事、家田東穂(はるほ)さんによってシュラスコが振舞われた。