コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年9月20日付け

 北朝鮮の金永南氏は「健在」と主張するが、金正日総書記の脳卒中は動かせない。軍医5人を派遣して手術を行った中国政府が「四肢に障害」と断定しているのだからー間違いない。以前から動脈硬化の傾向がありドイツ人医師の治療を受けているし、あの肥満気味の体型から見ても、いつ倒れてもおかしくはない状態だったと見ていいのではないか▼あの国の情報は少なく、実情がどうなっているのかはよくわからない。日本人の拉致や核兵器とテポドンなど軍部優先の国家らしいけれども、国民の暮らしは飢餓に近く、アメリカにさえも「食糧支援を」とかなりしっつこい。兎に角―謎が多い。実父の故金日成主席にしても、抗日戦争の英雄であり、政権を獲るまでの抗争も神話的で伝説に近いーの有力な説が今に語り継がれる▼あの朝鮮戦争にしても、北朝鮮が38度線を越えて韓国に攻め込んできたのに、韓国が先に攻撃したと公言して憚らなかったし、日本の社会党も堂々と「韓国侵略説」を掲げ世の中を混乱させた。この戦争は金日成主席のやったことながらー息子の金正日総書記もやりたい放題である▼ビルマを訪問中の全斗煥大統領を狙い、韓国の閣僚を爆死させたラングーン爆弾事件と大韓航空機爆破で乗客ら多数を死亡させた事件など過激で残虐な犯罪もある。こんな強硬路線を取る一方で革新系の金大中氏が韓国大統領になるとピヨンアンで会談とかなりややこしい▼と、不可解な国であるが、既に後継選びが始まったらしく、実子の正男か正哲、正雲各氏の争いのようだが、義弟の実力者・趙成沢氏の説もあるし、なかなかに難しい。  (遯)