全ての世代が盛り上げた=ピラール・ド・スール=盛りだくさんの敬老会=「子供達の演技よかった」

ニッケイ新聞 2008年9月23日付け

 ピラール・ド・スール文化体育協会(阿部勇吉会長)の第三十回敬老会が七日午前九時から同文協会館で催された。文協会員約百六十家族から、今年は七十二歳以上の高齢者七十五人がお祝いされ、そのうち五十七人が元気に会場を訪れた。
 最高齢者は百三歳の長浜ふでさん。長浜さんは一九四五年、この町における最初の邦人入植者として足を踏み入れ、以来この町の日系社会の歴史と共に過ごしてきた。また高野捨野さんは今年白寿の表彰を受けた。
 開拓先亡者への黙祷の後、阿部会長がこれまでの高齢者の功績を称え、日本語学校の田中さなえさんからは「今こうやって勉強できるのもおじいちゃん、おばあちゃんのおかげです。いつまでもお元気でいてください」と感謝の言葉があった。
 婦人会の上芝原初美会長は、「昔の会長の佐々木新太郎さんがおっしゃっていた『笑って過ごすも五十年、泣いて過ごすも五十年、同じ五十年なら笑って過ごそう』という言葉が思い出される。今、老荘会は隣町ピエダーデの寿会とも交流をしており、今後の余生を一日一日大切に過ごしてほしい」と励ましの言葉を述べた。
 その後、表彰者の名前が一人ずつ呼ばれ、紅白の餅や記念品、日本語学校の生徒達が作ったプレゼント、婦人会が心を込めて作ったお弁当などが配られた。続いてこの日出席した男女最高齢者の雪丸初二さん(89)、豊田スギさん(94)がケーキカットを行った。
 記念撮影、乾杯に続いて、昼食時には約三十分にわたりスライドショーが行われ、ピラール・ド・スール文協のこれまでの歴史と日本語学校の活動が紹介された。参加者は時折笑いを交えながら懐かしそうな表情でスクリーンに次々に現れる写真に見入っていた。
 午前十一時からは余興が始まり、太鼓部の演奏で幕開け。高齢者達も太鼓の持つ日本的な響きに感動し、日本伝統文化に真剣に取り組む子供達を熱心に見つめていた。
 婦人会や母の会、日本語学校教師も数曲の踊りを披露した。この日のために、夜、会館に集まって練習したという見事な踊りを見せ、踊り終えると成功と安心感とから喜びの声を上げていた。
 日本語学校からは、合唱、合奏、劇、踊りなど十の出し物が用意され、おじいちゃん、おばあちゃん達は孫やひ孫達の発表を温かい目で見守っていた。全児童による合唱「上を向いて歩こう」や合奏「おぼろ月夜」では、高齢者や婦人会の人などがいっしょに口ずさむ姿も見られた。
 高学年生は祖父母らの移民の体験を元にした劇を行い、生徒達の素晴らしい演技に会場からは何度も笑いが起き、また年齢問わず涙を流す人も多く見られた。「ストーリーも素晴らしく、子供達の演技がものすごかった。今年のは本当によかった。ありがとうございます」と感激の声も聞かれた。日本語学校教師は「今年行ってきたブラジル日本移民学習の集大成。今回、発表会のレベルを超えた本物の劇を目標とし、子供達には全ての面で本当の演技を追及したのだが、見事に応えてくれた」と喜びを語った。
 約四十人の生徒による、二種類のYOSAKOIソーランも披露。プログラムの最後には、阿部会長と後藤紀子JICAシニアボランティアが飛び入りで社交ダンスを披露し、会場を盛り上げた。
 婦人会、母の会、日本語学校の子供と全ての世代がいっしょになって高齢者をお祝いし盛り上げ、また共に楽しんだ敬老会。三十ある余興のプログラムは三時間に及んだが、その大半を占めた子供による発表により終始活気に満ち溢れ、途中で帰る高齢者はほとんどおらず、最後まで楽しく過ごした。