コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年10月1日付け

 今度は米国が自爆テロ!?――というのは悪い冗談だが、九月二十九日午後四時ごろサンパウロ市証券取引所の株価が九%、一一%、一三%と分刻みに急落する数字を唖然としながら見ていて、そんな印象を受けた▼前日まで「承認される見通し」との観測報道が流れていた米国下院議会で、大統領による金融危機救済案を否決、しかも大統領の足元である共和党自らが反対に動いたことにより、一気に世界の株価が反応した▼今回の危機には予定調和が約束されておらず、そう簡単には解決しないことを一瞬のうちに世界が了解した。言葉は悪いが、米国主導の金融システムへの自爆テロであり、今回の世界貿易センタービル役は分刻みで暴落(崩落)した「世界の証券市場」かもしれない▼かと思えば、スペイン経済紙「アメリカ・エコノミカ」電子版は九月二十六日付けで「もう一つの真珠湾(ウォールストリートの遭難者を釣り上げる日本の銀行)」との皮肉なタイトルで、日本証券大手の野村がリーマンのアジア事業買収、三菱UFJグループの米証券モルガン・スタンレーへの巨額出資を報じた▼「危機、どこの話だ?」ととぼけていられたルーラ大統領も成長の下方修正を視野に入れてきた。ブラジルメディアは「今、証券株券を安値で手放しても損するだけ。ブラジル経済は健全だから、いずれ本来の値段に戻る。それまで待つのが得策」との論調が多い▼たとえ米国が自爆して世界経済が焼け野原の〃真珠湾〃となっても、日本国民の関心は国内の総選挙の方ばかりを向いている感がある。焼け野原で割安になった〃お宝〃を探して儲け、最後に高笑いをするのは誰か。(深)