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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年11月12日付け

 新興国と欧州勢は米国発金融危機の機会に、一九四四年のブレトン・ウッズ会議が作ったIMFや世銀という組織をベースにした、米国中心のドル基軸体制が揺るがそうとしているようだ▼来年、戦後初めて日欧米が揃ってゼロ成長に落ち込むとの予測をIMFが発表した。その間、世界経済の成長を支えるのは新興国であり、その分、発言権を増すべし、との主張だ。このタイミングで中国が五七兆円規模という大型の景気刺激策を発表したのは、来年の世界経済の成長を支える強い意思表示として好感された▼有効な対策を打ち出せない先進諸国を批判するブラジルは、議長国として存在感をしめした。新興国勢力を後押ししているのが、仏サルコジ大統領を中心とする欧州勢だ。G20で財務相が来たのはカナダと仏のみ。仏財相は新興国側に立った発言が際立った。現在、ルーラ大統領はイタリアで、今週末にワシントンで行われる金融サミットの打ち合わせ中だ▼逆にカナダは米国寄りにたって「危機の真っ直中でIMFの本質的問題を議論するのはいかがなものか」と抵抗した。その中で、世界第二の経済大国日本は相変わらず存在感が薄い▼今回の危機はまったく終息していない。それどころか、このまま行けば基軸通貨としてのドルが崩れる可能性があるとの意見が、日本の全国紙にすら出てきた。かつてないことだ▼十一日付けエスタード通信記事のよれば、EU勢はオバマ新大統領が就任した一カ月以内、今後百日間程度を目途に新金融体制を作る構想を進めている。これを機に伯欧関係が緊密化したら、再活性化しつつある日伯関係はどうなるのか。(深)

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