コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年12月3日付け

 世界は金融危機から同時不況へ向かうのか。まるでパンドラの箱が開いたように悪いニュースが飛び込んでくる▼この十月までの一年間に、先進諸国の株式市場の下げは四〇%程度、新興諸国も五〇%程度、日本も日経平均で一時四八%もの下げを記録した。「百年に一度」だ▼いったい底はどこにあるのか。IMFは不良債権を一兆六〇〇〇億ドルと見積もっているが、いかにも少ない。モニトール・メルカンチール紙サイト二日付けは、世界の金融派生商品の総額は五四〇兆ドルと試算している。なんと国内総生産の世界合計の約十倍だ。そのうちどれだけが損失になるのか、誰にも分からない▼同紙によれば、年初から〃金融の神殿〃から二五兆ドルが煙と消えた。ヘッジファンドが十月に決算をした分だけで八八〇億ドルの損失を出したという。その清算のために、新興諸国に投資していた資金を根こそぎ引き上げ、各地で株価暴落を起こしたという▼先月二十六日付けエスタード紙によれば、世界各国の景気刺激策は二三兆ドル、銀行救済資金の七〇兆ドルを合計すると一〇〇兆ドルにもなる▼だが収まる気配はなく、危機第二弾を警告する記事すらでてきた。今回の危機でダメージを受けた新興国が同時多発的に債務不履行に陥る可能性だ。これを防ぐのはIMFの役割だが、資金はわずか二〇〇〇億ドル(約二〇兆円)しかない▼英国、スペインで地価暴落が起きるという記事もあれば、国家破産に追い込まれたアイスランドの次にヘッジファンドが狙っているのは、前年比四〇%もウォンが落ちた韓国との憶測記事もある。ブラジルも人ごとではない。(深)