藤間流=新春踊り初め今年も盛会=亡くなった3名取りを顕彰

ニッケイ新聞 2009年1月15日付け

 藤間流日本舞踊学校(藤間芳之丞校長)による第四十八回新春日本舞踊「踊り初めの会」が十一日午後、文協大講堂で行われた。生徒たちは一年間の鍛錬の成果を存分に発揮し、来場者約七百人は五時間半に渡る長丁場だったが、じっと見入り、拍手を送っていた。
 最初に一回も授業を休まなかった生徒十九人に皆勤賞が授与され、続いて藤間芳翁、芳苑両名取りによる華やかな新春の舞「春の寿」で幕を開けた。舞台の左右にりっぱな門松が立てられ、背景には飛翔する鶴の絵が飾られ、めでたさを演出していた。
 第一部は普通科の生徒二十人余りがそれぞれの成果を披露した。六人による楽しそうな「花の輪おどり」、「雨の五郎」を凛々しく演じたリカルド・パラダースさんは初舞台を飾り、とりは非日系のヘナン・フェルナンデスさんのしっかりとした所作が頼もしい、大らかで格調高い「七福神」で幕を閉じた。
 第二部はより進んだ生徒の専攻科の演目で、小倉ふささんの「牡丹獅子」から始まり、田畑ひろみさんは「手習子」であでやかな舞を見せ、尾田咲枝さんの「鶴の寿」がとりを飾った。
 第三部は名取りによる「祝賀と色彩」とテーマにした演目で、芳寿さんがお祝いの場に欠かせない「雛鶴三番双」を見事に舞い、芳吾、芳翁、芳苑、芳誠ら名取りの模範演舞に続き、最後は芳之丞校長が「島の千歳」で見事にしめた。
 第四部は全員総出の豪華な演出で、昨年立て続けに亡くなった芳嘉、芳恵、芳豊ら三人の名取り、中でも同流派創立以来、会主の右腕として後進の指導に尽力してきた芳嘉さんの写真を背景に映してオメナージェンし、『昴』や『花』などの日本の歌謡曲に合わせて舞った。
 最後に芳之丞校長は閉会のあいさつに立ち、「来年は創立五十周年になります。とても感慨深い。昨年は百周年というめでたい年だったが、私たちにとっては名取りが三人も亡くなる大変な年だった。十六歳で入門してきてからずっと一緒にやってきた芳嘉が五十九歳で亡くなり、本当におしい人をという気持ちで一杯。涙も乾かないうちに今年も『踊り初め』になった」と万感の想いを込めた様子で述べ、「さらに新名取りが生まれると確信しています。日伯親善のために今年もますますがんばっていきます」と宣言した。
 来場者の一人、田中エミリアさん(79、ブラジル生け花協会会長)は「ヘナンさん、素晴らしい。日系でない人があのような立派な踊りを見せているのをみると、涙が出てくる。新年に相応しい初舞いでした」と感想をのべた。
 また、芳豊名取りの姉、尾崎都貴子さん(87、広島県)は「フィナーレが特に良かった」と嬉しそうに語り、青柳以来のファンが多く、四十八年もの長きに渡って師匠に仕え、八十四歳で亡くなった妹を偲んだ。