デカセギ危機の実状は=ブラジル副領事が群馬県訪問=日系人労働者の声を聞く=「どんな仕事でもやる」

ニッケイ新聞 2009年1月17日付け

 【東京支社=藤崎康夫支社長】米国金融危機に端を発した不況の嵐は、自動車産業をはじめ日本の産業にも大きな影響を与えている。労働者の三人に一人が非正規となった日本で、非正規労働者の失業は、住居問題も含め、深刻化している。在東京ブラジル総領事館にも様々な問題が伝わり、その事実関係を確かめ、実情を調べるために、マルコス・トレス・デ・オリヴェイラ副領事が十三日、北関東で最もブラジル人が集住する群馬県大泉町、太田市、伊勢崎市を訪問した。
 副領事に実情を説明しようと、大泉町のブラジル商店には、日系労働者をはじめ、NGO関係者、ブラジル銀行関係者、日系人から相談を受ける大泉日伯センター、高野祥子さんらが参加した。
 失業者に対して就労条件が合わないためか、年齢制限によるものか、親戚の有無など、細かく聞き取りがなされた。
 「生後九カ月をはじめとする子供たちがおり、夫人は一年半ほど仕事ができず、自分自身も二カ月半、仕事ができません。帰国をすることもできず、何か解決策がないかと思って、ここに来ました」と男性の一人はいう。
 その他、「ハローワークに行きました。派遣会社にも行ってきましたが、全然仕事はありませんでした。心配です」という人や、「仕事さえあれば……。どんな仕事でもしたいのです。二人の子供がおり貯える余裕がなかったです」と訴える人もいた。
 また、「妻が日系人です。来月までという約束で、姑さんの家に入りこんでいます。二人の子供を抱えて住むところがなくなります」と困惑した様子で説明する非日系人もいた。
 さらに「ここは東海地区と違って、まだいい方だと思います。向こうは自動車、こちらは電気です。大きい企業ほど打撃をこうむっています」という意見もあるなど、それぞれに深刻な状況が語られた。
 オリヴェイラ副領事は、日系人が共同で住む家を訪ね、その環境も視察した。また、夫がペルー人で六人の子供を抱える日系人女性の実情も調査するなど、副領事一行は太田市から伊勢崎へと、精力的な調査をつづけた。