コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年1月28日付け

 「百周年で地方は団結し、力をつけた」。そんな声が聞こえる。実際、ロンドリーナ、マリンガ、レジストロ、聖南西、ノロエステなどは市役所と協力して日本公園や記念碑、鳥居などを建て節目の年に形を残した▼それに引きかえ、肝心のサンパウロ市には百周年を記念した何ものも建つことはなかった。立派な式典は行ったが、それで終わりそうだ。もちろん形あるものが残ればいいのではなく、せっかくの百年に一度の節目を、一過性のもので終わらせないことが大事ではないか▼聖南西文化体育連盟の会議でも「サンパウロ市の文協は市内のお偉方ばかりで、地方には見向きもしてくれない」という意見や「百周年協会に任せて、文協は百周年で何にもしなかった」と厳しい声がでた。地方からすれば、式典の時に顔を出すだけの〈お偉いさん〉―縦のつながり―ではなく、日常的に共に悩み、考えてくれる存在―横のつながり―が必要なのだ▼ブラジル社会で名を成した〈お偉いさん〉が頭で構想する日系社会より、コムニダーデの中で生きてきた人材の方が血の通った将来像を思い描くこと出来るはずだ▼パラナ州内の七十日系団体をまとめるリーガ・アリアンサの会長は、本部のあるロンドリーナの会長がなるわけではない。北パラナ全体から選ばれる。サンパウロ市文協も、市内から会長を選ぶ必要はない。モジ、スザノ、レジストロ、ABC地区などの団体代表が就任してもおかしくない。それが起きないのは、サンパウロ市文協との関係が縦のつながりになっているからだろう▼百周年後は地方とのネットワーク強化の時代ではないか。それを強化できる人に、次の百年を託すべきだ。(深)