年金「掛け捨て」にしないで=帰国外国人に呼びかけ=日本の外国人支援団体ら

ニッケイ新聞 2009年1月30日付け

 【日本発】派遣会社などで働いていた在日外国人が大量に解雇される中、日本で支払っていた国民年金や厚生年金が事実上「掛け捨て」になったまま、一部返金を受ける手続きがあることを知らず帰国する外国人が相次いでいる。外国人支援団体らは、日本で掛けていた年金についてどんな権利があるのかを知ってほしいと呼びかけている。
 日本の居住者はすべて国民年金か厚生年金へ加入する義務があり、二十五年間保険金を払うと六十五歳以降に年金を受給できる。二十五年に満たない年数で帰国した外国人は、年金制度から脱退する旨を帰国後二年以内に社会保険庁へ申告した場合、脱退一時金として一部の返金を受けられる。
 例えば二〇〇八年三月までの五年間、月給二十五万円で働き、同期間の年金保険料を満額納めて帰国していた場合、脱退の申告をすることによって国民年金加入者なら二十五万三千八百円、厚生年金加入者なら六十五万円の脱退一時金を受け取れる。
 社会保険庁は脱退一時金の手続きを解説した多言語の手引きをつくっているが、西日本で日系ブラジル人を支援している外国人支援NPO法人によると、昨年末に地方の社会保険事務所へ問い合わせると配布用の手引きは全く用意されていなかったという。
 同法人は「脱退一時金の手続き方法は帰国前に知らせなければ意味がないのに、全く周知しようという動きがない。手引きに書かれている問い合わせ電話番号も、日本語でしか対応していない」と社会保険庁の対応の不十分さを指摘している。
 一方、日本と母国の間で社会保障協定が結ばれている場合は年金加入年数が両国で通算されるため、帰国後にも日本での年金受給権が生じる可能性がある。脱退するとこうした権利も放棄することになるため、手引きでは注意して手続きするよう呼びかけている。
 現在日本が同協定を結んでいる国はドイツ▽英国▽韓国▽米国▽ベルギー▽仏国―の六カ国。ブラジルについては昨年十月、協定締結を視野に入れた両国政府の作業部会が行われている。
 脱退一時金を受けられるのは、次の四条件をすべて満たす人。
(1)日本国籍でない(2)被保険者期間が六カ月以上ある(3)日本に住所がない(4)年金(障害手当金を含む)を受ける権利を有したことがない。
 手続きに必要な書類は、次の通り。
▽脱退一時金裁定請求書▽パスポートのコピー(最後に日本を出国した年月日、氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページ)▽銀行名、支店名、支店の所在地、口座番号、口座名義(請求者本人の名義)が確認できる銀行発行の証明書類▽年金手帳。
 脱退一時金受給手続きの手引きはホームページhttp://www.sia.go.jp/e/lw.htmlでダウンロードできる。英語、中国語、韓国・朝鮮語、ポルトガル語、スペイン語、インドネシア語の六カ国語版がある。(日米タイムズ・松田葉子)