デカセギ子弟と歩んで8年=大泉の「国際教育技術普及センター」=08年度「地球市民賞」受賞=いまOBも運営助け=地域文化交流の拠点に

ニッケイ新聞 2009年2月7日付け

【東京発=池田泰久通信員】地域に根ざしながら国際文化交流活動を行う団体や個人を顕彰する国際交流基金(東京)の「地球市民賞」で、〇八度の受賞団体に、群馬県大泉町の特定非営利活動法人「大泉国際教育技術普及センター」(理事長・高野祥子=同町在住)が選ばれた。式が三日夜、東京都内の国際文化会館で開かれ、他団体の受賞関係者や報道陣含め、百五十人ほどが出席。賞状と二百万円の目録を受け取った高野さんは「大変名誉ある賞を頂き言葉に言い尽くせないほどの嬉しさ。今後も地域と日伯両国の友好発展のために努力していきたい」と感激の面持ちで決意を述べた。

 同賞は、他のモデルになるような国際文化交流活動を続ける団体・個人を表彰することを目的に、国際交流基金(本部=東京都新宿区)が「国際交流基金地域交流振興」として八五年に創設。〇五年に現在の名称に改め、これまで理事長特別表彰一団体含め、七十の個人や団体が受賞している(同基金より)。今年度は、マスコミや国際交流団体、自治体など、各界から百六件の推薦があった。
 同普及センターは、ブラジル人学校の子ども達の学習成果やブラジル文化を発表する場として、「ブラジル青少年フェスティバル」を毎年開催。ブラジル人と地域住民が相互に文化を教え合ったり、日本語学習を支援する事業などを積極的に展開し、多文化共生社会の実現に貢献してきたことが高く評価された。
 理事長の高野さんは、十三歳でブラジルに移住し、一九八九年に帰国。〇一年に群馬県大泉町に同センターを設立し、デカセギの子弟たちが日本語を話せないことで学校になじめず、居場所がない状況を見て、日本語教室を立ち上げた。現在はここで千八百人が学ぶ。サンバやカポエイラのクラスなどもあり、両国文化の相互理解の場になっている。
 賞状を受け取った高野さんは、人口約四万人のうち一五%が外国人で占められる同町の特徴やセンターの活動経緯などを紹介。その上で、同センターで学び、現在そこで日本語教師のボランティアを続ける日系ブラジル人の大学生三人を舞台に招き、「彼らは目標が見えない多くのブラジル人の子ども達の成長モデル」と優しく褒め称えた。
 三人を代表して新垣オタヴィオさん(20、三世、同町在住)が挨拶。「先生に勧められて始めたボランティアのおかげで、人の役に立つことの嬉しさを知った。これからは日系の子に日本語を学ぶ良さを伝えたい。日系であることに誇りを持っていきたい」などと述べると、会場から大きな拍手が送られた。
 新垣さんは、サンパウロ州サント・アンドレー市出身。十歳で両親とともに日本へ。群馬県立太田工業高校を卒業後、教員の勉強をするため、現在、共愛学園前橋国際大学に自宅から通っている。将来の夢について尋ねると、「小さいころは将来工場で働くしかないと思っていた。でも今は日本語教師とポルトガル語の翻訳などをしたい」と言って笑顔を見せた。
 同センターのほかに受賞したのは、世界各国から若手芸術家などを地域に受け入れる事業などを手がける「S―AIR(エスエア、北海道札幌市)」と、アジアやアフリカ、中南米などの音楽を地域の若者に伝える「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド実行委員会(富山県南砺市)」。
 式には、高円宮妃久子さまも出席され、各受賞団体の代表者の挨拶に熱心に耳を傾けられていた。