「椰子樹」の高橋暎子さん=日本で「平和の礎」出版

ニッケイ新聞 2009年2月12日付け

 高橋暎子さん(68、サンロッケ在住)が執筆した「平和の礎―南半球で読む『昭和萬葉集』」が昨年十一月、日本のそうぶん社から出版された。
 同著は二〇〇六年に本紙連載小説欄に掲載された「南半球で読む昭和萬葉集」を加筆訂正したもの。昭和元年から五十五年の間に作られた短歌により編纂された「昭和萬葉集」(全二十巻)の中から選んだ二百三十首あまりの短歌に社会的な側面から説明、解説を加えた内容だ。
 「昭和時代の開幕」から、戦前の満州事変、二・二六事件、そして日中戦争、太平洋戦争の始まりと敗戦、戦後まで七章に分かれ、その歌が詠まれた時代背景や著者の心情、ブラジル移民との関わりなどが綴られている。
 高橋さんは山口県で生まれた後満州へ渡り、四六年に一家で引き上げ。五六年にブラジルへ移住した。現在は短歌同人誌「椰子樹」の会員、選者を務める。
 戦争前後の時代が「平和の時代の礎になった」と高橋さんが話すように、同著には「国の為重きつとめを果たし得で矢弾尽き果て散るぞ悲しき」(栗林忠道)、「帰って来たか帰って来たかと老母は白木の箱を抱きて呼ばえる」(田沢孝次)、「はらからの歓呼のこゑもなくてたつ二世の兵を詫びしみにけり」(盛岡松猪)のように戦争の時代に関するものも多い。
 全百八十九ページ。三百部の自費出版。出版費用を作るため日本へ働きに行ったという高橋さんは、「好奇心もありましたね」と当時を振り返りながら、「感動を一人でも多くの人に知ってほしいと思った」と出版への思いを話した。
 同著は一冊四十レアルで販売している。問合わせは高橋さん(電話=〈15〉11・4714・0182)まで。