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人文研=奨学制度で研究員育成=田中洋典氏が所長就任=企業、篤志家の協力呼びかけ

ニッケイ新聞 2009年3月24日付け

 サンパウロ人文科学研究所(人文研、本山省三理事長)は十九日記者会見を開き、「若手研究員育成のための奨学制度」の実施を発表した。人文研は唯一のブラジル日本移民史・日系社会の研究機関だが、長年研究者のいない状況が続いていた。昨年三月の総会決議に基づき、検討されていたもの。「本来の機能に立ち返って、研究員育成に力を入れたい」と鈴木正威理事は説明している。なお、田中洋典常務理事の所長就任も決まっている。
 これから各大学などで奨学生を公募、第一期の人数は五人を予定している。各学生への奨学金は、月額一最低給料(四百六十五レアル)。
 人文研が所有、会費とともに主な収入源である牛の委託管理をしているサンヨー農牧会社からの寄付金(一最低給料)を奨学金に充てることが決まっているが、問題は残りの四人分だ。
 五月末に予定されている『文協古本市』に出品するなどの自助努力も行うが、一口一最低給料の協力を目処に企業などにも協力を広く呼びかけていく考えだ。
 辻哲三財務理事は、「コロニア、進出企業、篤志家の皆さんの賛同をお願いしたい」と理解を求めている。
 なお、同制度推進のため、体制の見直しも図り、田中洋典常任理事が兼任で所長に就任することも発表された。すでに二月の理事会で承認されている。
 田中新所長は、「初めてのことだから、どうなることか」と控えめに話しつつも、人文研のあるべき体制作りに静かなやる気を漲らせていた。
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■奨学制度の実施要綱■
【予定人員】五人。
【資格】現在大学学部生、院生で基本的にポルトガル語が優先されるが、分野によっては日本語の知識も要求される。
【研究テーマ】従来のブラジル日本移民、日系社会に加え、日本・ブラジル交流史に沿ったもの。
【奨学金】月額一最低給料(四百六十五レアル)で返還の必要はない。
【指導教官】本山省三(理事長、USP教授、歴史学)、菊地マリオ(副理事長、社会学)、森幸一(常任理事、USP教授、文化人類学)。
【条件】◎人文研に週十時間出頭し、研究テーマについて指導教官の助言を受ける◎年二回の研究報告書提出する◎ゼミ、シンポジウムに出席する◎紀要に論文を掲載する◎制度の時間中、他研究をしない◎指導教官が奨学生として不適格と認めた場合、奨学金の支給を停止する。
 寄付、奨学制度に関する問い合わせは、人文研(11・3277・8616)まで。

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