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人文研=所蔵図書のデータベースが完成=登録分約6千の検索が容易に=横尾さん「予定通りの仕事できた」

ニッケイ新聞 2009年3月26日付け

 サンパウロ人文科学研究所(人文研、田中洋典所長)が所蔵する約六千冊分の書籍のデータベースが今年一月にほぼ完成し、史料検索が容易になった。〇七年七月からJICA青年ボランティアとして、図書分類・データベースの構築を行った横尾悦子さん(33、佐賀)は、「基礎的なものはできたのでは」と満足そうな笑顔を見せている。横尾さんは六月に帰国、その後の入力作業は人文研の職員が引き続き行い、HP(http://www.100nen.com.br/ja/jinmonken/)での公開を目指す。
 三年ほど前、鈴木正威理事らが独自に分類法を定め、所蔵図書を大まかに分別していたが、「見て探すしかない状態だった」(人文研関係者)。
 派遣前、人文研のHPでシロアリ駆除に関するコラムを読み、少々不安に感じたという横尾さん。「ホコリは凄かったが、仕事自体はそれほど困難ではなかった」と話す。
 タイトル、責任表示、出版社など、それぞれの読み方をカタカナでコンピュータに入力、背表紙にラベルを張り、書架に整理する作業を行った。 日本の図書館での作業との違いはなく、あえて挙げれば、分類用ソフトがないためエクセルで作業を進めたことだとか。
 今回登録されたのは、五千七百五十二冊。うち移民関係図書は二千八百九十九、移民関係雑誌は千三十七、一般図書は千八百十六。
 すでにコンピュータ検索はできるが、内容細目の入力が少ないため、キーワードが限定されるのが難となっている。
 国会図書館サイトや日本全国の大学所蔵の図書検索システム「WEBCAT」にある本の内容細目は入力しているが、人文研にしかない書籍に関しては、一つ一つ目次や内容を書き込む必要があり、人文研職員が引き続き作業を行うという。
 作業に伴い、重複する出版物が大量に発見されたことから、一般書籍は五月末に予定されている文協古本市に出品、移民関連書籍は二冊を人文研で保管し、そのほかは研究者を対象に販売、運営費に充てられることにもなった。
 「アマゾンやカーニバルだけで、来伯前は日系社会の知識はほとんどなかった」と話す横尾さんだが、仕事柄、日系社会の歴史に触れることも多く、『香山六郎回想録』や半田知雄著『移民の生活』も手に取った。
 〇八年には、県連主催の移民のふるさと巡りにも参加、「移住地には行ってみたかった。コロニアは面白い」と顔をほころばす。
 鈴木理事は、「朝から黙々と予想以上によくやってくれた」と高く評価し、HPでの公開を見据え、「関心のある人にどう活用してもらえるかがこれからの課題」と話している。

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