コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年4月8日付け

 この一月にサンパウロ州リベイラ沿岸のパリケラ・アスーに二世らが中心になって新日系団体が誕生したことは、百一年目に相応しい、喜ばしい出来事だ。従来の日本人会は、ポ語の不得意な一世が互助親睦のために立ち上げたものだった。言葉に問題のない二世には日系団体は必要がない、との議論もあったくらいだ▼ところが十年来、明らかに新しい傾向が強まっている。二世による二世のための日系団体だ。昨年はロライマ州ボア・ビスタ市に新団体が組織された。サンタカタリーナ州フロリアノーポリス市のニッポ・カタリネンセ協会も当初から二世中心だった▼百年祭の前からその機運はあったが、昨年にブラジル社会が盛大に祝ってくれたことにより、さらに高まった。今までコムニダーデの活動や日系人としてのアイデンティティに関心のなかった若者層が目覚め始めている▼おそらく組織というものは、創立者グループが中心になって活動する最初の三十年余りが最も活発な時期であり、中興の祖が現れて時代に合わせた変革をすれば別だが、一般的には徐々に勢いを失っていくものなのだろう。新団体が生まれることは、日系社会が全体としては健全に新陳代謝を進めている証拠だ▼注目されるのは、従来はポ語が理解できれば非日系との境はなくなると思っていたが、実はそんなに単純なものではなく、言葉の問題を超えたところに「日系」と「非日系」の境界があることが明らかになってきた点だ▼その区別は決して悪いことではない。むしろ、「日系人の特質を残してブラジル社会に統合する」というあり方を具現化したものになっていくだろう。(深)