【出版】=「『出稼ぎ』から『デカセギ』へ」=上智大の三田教授が新著

ニッケイ新聞 2009年5月5日付け

 上智大学外国語学部の三田千代子教授の新著『「出稼ぎ」から「デカセギ」へ ブラジル移民100年にみる人と文化のダイナミズム』(不二出版、二千円)が三月に発売された。A5版、二百八十八頁。
 紹介文には、「ブラジルは、日本移民を七十年の長期にわたり制度的に受け入れてきた唯一の国である」と位置付け、「この百年のブラジルと日本との移民の社会文化史を追うことによって、去りし者=出移民と、来たりし者=入移民による、ヒトの移動によってもたらされた文化のダイナミックな変容を考察」とある。
 最初に「去りし者」としての日本移民が日本を去って多民族国家ブラジルに渡った様子から、人の移動に伴って変容する文化を論じる。次に「来たりし者」としてのデカセギが日本に来て、「彷徨うデカセギ・ブラジル人」から、ナショナリズムとエスニシティ・グローバリゼーションへと展開する。
 慶応大学の柳田利夫教授は、「ブラジルに移住者として渡航し生活の拠点を築きつつ大きく文化変容を遂げていった日本人移民の姿を、近年の日系ブラジル人による日本『デカセギ』の動向と変容に重ね合わせつつ、近代国民国家形成や近代世界における人の移動、というダイナミックで大きな枠組みの中でこれまで多くの論考を著している」と著者を紹介し、社会人類学的視野からのダイナミックな考察が行われていると推薦している。