コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2009年5月5日付け

 ブラジルへ来てから治安の悪さに神経質だった私だが、一カ月が経過し、落ち着いて生活し始めた最近。
 薬局の前で貧しそうな少年に話し掛けられた。物乞いかとお金を取り出そうとすると、お金はいらないという。
 意味が分からず聞き返すと、「弟の紙おむつを買いたいので自分が集めた五レアルとの差額を出して欲しい」という。
 仕方なく承諾し一緒にレジへ向かった。私が二十レアルを取り出すと、「僕の集めたお金と合わせて買わなきゃだめだよね?」と遠慮がちに尋ねる。もちろん彼のお金を足して支払ったが、それでも少年は嬉しそうに礼を言っていなくなった。
 自分もお腹をすかしているはずなのに、弟のためにお金を使わずに取っておいたのだろうか。苦しい境遇の中でも人に優しくすることはできる。そう彼から少し勇気をもらった。    (裕)