人文研=次世代の研究者育成を=奨学制度一期生を募集

ニッケイ新聞 2009年5月15日付け

 サンパウロ人文科学研究所(人文研、本山省三理事長)は十二日午後、同事務所で会見を開き、昨年から検討してきた「若手研究員育成のための奨学制度」の第一期生募集をはじめると発表した。田中洋典所長、鈴木正威理事は「最大の懸案として鋭意準備してきたが、資金の目処がついた」と説明し、「若い研究員、次の人文研を担う人材を育成したい」と力強く述べた。
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 募集人数は四人(新たな寄付が寄せられれば五人)、月額一最低給料(四百六十五レアル)を学習基盤の一助として一カ年給付する。今月十五日から六月十五日までの一カ月間、人文研で申込みを受け付ける。
 三年前から行われ、今まで一般経理に使用していたサンヨー農牧会社からの寄付金(毎月一最低給料)を回すほか、企業経営者の続木善夫氏から期限なしで毎月二人分(九百三十レアル)、また高岡専太郎氏の孫、建築技師の高岡マルセロ氏から五年間毎月一人分の申し入れがあった。
 人文研では、さらに企業や篤志家に協力を広く呼びかけていくが、最低四人の募集枠で、七月中に選考を行い八月からスタートさせる予定。
 なお、コチア産業組合の元農業指導員だった続木氏からは、「農業の歴史は日本人移民の歴史。一人は日系農業をテーマ」との条件がついている。
 鈴木理事は、「今まで半田知雄氏にしろ、日本人移民に関する研究はコロニアの中で行われ、人文研は閉ざされていた」と話し、「今は日本に興味を持つ非日系人が、大学で新渡戸稲造や枕草子を研究する時代。そういう新しい時代の要請に応え、自己革新、再生をしていかなくては」と力を込めた。
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 奨学制度の実施要綱は次の通り。
【予定人員】四~五人。
【資格】現在大学学部二年生以上、または院生で基本的にポルトガル語が優先されるが、分野によっては日本語の知識も要求される。
【選考】(1)履歴書、(2)計画書、(3)面接によって実施。
【研究テーマ】従来のブラジル日本移民、日系社会に加え、日本・ブラジル交流史に沿ったもの。
【奨学金】月額一最低給料(四百六十五レアル)で返還の必要はない。原則一カ年だが延長可能。
【申し込み期限】五月十五日から六月十五日。
【選考】七月中に実施。
【指導教官】本山省三(理事長、USP教授、歴史学)、菊地マリオ(副理事長、社会学)、森幸一(常任理事、USP教授、文化人類学)。
【条件】◎人文研に週十時間出頭し、研究テーマについて指導教官の助言を受ける、◎年二回の研究報告書提出する、◎ゼミ、シンポジウムに出席する、◎複数の奨学金を貰ってはならない、◎三カ月に一度経過報告書を提出する、◎指導教官が奨学生として不適格と認めた場合、奨学金の支給を停止する。
【応募方法】人文研に出向き、申込書を記入・提出。
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 寄付や奨学制度に関する問い合わせは、人文研(開所時間=平日午後二時から六時。住所=リベルダーデ区サンジョアキン街381文協ビル三階。電話=11・3277・8616。サイト=www.cenb.org.br)。