新百年紀の日伯緊密化へ=新幹線方式をブラジルに=首都で盛大にセミナー=伯日議連主催、下院で

ニッケイ新聞 2009年6月18日付け

 伯日議連主催の高速鉄道セミナーが十六日午後二時から、ブラジリアの下院ネレウ・ラモス講堂で行われ、数十人の連邦上下議や各地の日系市長を始め、多くの地元学生など、会場が満杯になる二百五十人以上が駆けつけ、注目を浴びた。ブラジル政府の高速鉄道プロジェクトに対し、同議連が全面支援する日本の新幹線方式技術導入のメリットを、「創業以来四十五年に八十億人を運んだが、旅客をまきこんだ致命的事故は一度もない」など安全性をはじめ、技術の高さ、環境への好影響など、幅広い視点から日本国国土交通省の専門家らが分かりやすく説明した。

 主催した飯星ワルテル伯日議連会長は最初に、「日本の技術は大変信頼性が高く、デジタルTV方式と同様にブラジルに相応しい」と支援する理由を挙げ、「ブラジルのさらなる発展に必要なプロジェクト。日本移民の新しい百年紀の開始にあたり、日伯関係の絆を深めるものになる」とのべ、百一年目の移民の日にちなんだセミナーとした。
 続いて、高速鉄道審議をする、連邦議会の交通機関委員会のマウロ・ロペス副委員長(下議)はまず、官民共同での実施に向けて法的整備が終わっていると進行状況を報告し、「リオ、サンパウロ、カンピーナスはもちろん、ベロ・オリゾンテ、クリチーバも視野に入っている」と改めて国家的広域事業であることを強調した。
 スペインの成功例を挙げつつ、「間違いなく日本方式は大量高速輸送網として、速さ、信頼性、正確性などの点で最先鋒にあり、印象深い」と高く評価し、「このセミナーで最新情報が得られる」と喜んだ。
 新幹線技術の第一人者といわれる、国土交通省鉄道局の佐伯洋技術審議官は、三百キロから八百キロの区間の旅客移動に関して、高速鉄道は安全性や環境に低負荷などの点で圧倒的な利点があり、リオ・サンパウロ市間の四百キロはまさにその範囲と前置きした。
 高度経済成長の真っ直中に導入された新幹線は、現在では年間三億人を輸送し、「日本のGDP(国内総生産)と新幹線の旅客数は近い推移をしている」とブラジル発展の礎となれることを強調。
 その上で、「世界で最も経済的に成功している東海道新幹線(東京・名古屋・京都・大阪)とリオ・サンパウロ・カンピーナスは距離的にも近く、ほぼ同じモデルが活用でき、同様の可能性が期待できる」と語り、駅や沿線開発により相乗的な経済波及効果が期待できるとした。
 欧州の高速鉄道は在来線に乗り入れる形で構想されたが、日本は戦後の発展の過程で、ゼロから出発して最大限の理想を追求する形で新幹線を構想したことを強調し、「旅客輸送がほとんどないブラジルの現状からすれば、今の鉄道に拘らず、日本方式を取り入れて真っ白な画紙に理想を描いた方が将来の発展につながる」と説明した。
 さらに、ブラジル三井物産の鈴木雅雄副社長は、リオ・サンパウロ市間にはアララ山脈があり、山間部を貫通する技術力が高い日本方式の優位性をのべ、加速性能、ブレーキの利き方、トンネルに突入する際の振動の少なさなどの利点を並べ、「新幹線方式こそブラジル発展に役立つ」とまとめた。
 最後に、島内憲駐伯日本国大使は「資金面も含め、日本政府は全面的に協力する用意がある。新百年紀に日伯関係を緊密化させる好機」と締め括った。