「日本政府の支援に感謝」=ブラジリア=伯日議連のデカセギ・セミナーで=今後の課題は帰伯再適応へ

ニッケイ新聞 2009年6月20日付け

 【既報関連】首都ブラジリアで十六日に開催された新幹線セミナーに引き続き、同日午後四時から下院講堂で伯日連邦議員連盟(飯星ワルテル会長)が主催したデカセギ・セミナーが行われ、七人の専門家が現状と課題を発表した。連邦議会・政府関係者からは、日本政府が実施する在日日系人支援策に対する感謝の言葉が聞かれた。

 最初にウイリアン・ウー同議連副会長は「日本政府は在日ブラジル人コミュニティをしっかりと支援してくれている。ブラジル側でも色々なデカセギ支援法案がすでに下院に上程されている。共に手を取り合って、危機を好機にしよう」と語った。
 まず、国外就労者情報援護センターの二宮正人理事長が全体像を展望、続いて国家移民審議会のパウロ・セルジオ会長が、在日ブラジル人対策に関する国の方針を説明した。
 昨年十一月に調査団が訪日してブラジル人集住都市を視察、日本政府関係者と対策を協議した。三つ目の総領事館が、日本最大のブラジル人集住地・静岡県浜松市にもうじき開所するなどのブラジル外務省の対処が進む中、同審議会では在日ブラジル人には次の四つの課題があると考えているという。
 一つ目は間接雇用が多いために最初に解雇されるなどの社会的に不安定な状態に置かれている点、二つ目は解雇されても言葉や文化の違いが大きいため再就職が難しい点、三つ目は解雇が多い中で失業保険や生命保険、年金などの社会保障制度に入っていない者が多い点、四つ目は在日子弟に不登校が多い教育問題だ。
 「日本は世界で唯一、しっかりとしてブラジル人支援を打ち出した国。ブラジル政府として感謝している」と今年早々に日本政府によって出された総合的な日系人支援策への謝辞をのべた。
 ブラジル政府としても「カーザ・ド・トラバリャドール(労働者の家)」を日本に設置して、労働や法律問題の相談窓口、再就職支援講座の開設、帰伯に関する情報支援をする予定だという。
 「特に、両国文化の違いにより帰伯再適応問題が深刻である」との認識を示し、「日本政府と協調しながら長期的な視野においてバイリンガル教育、両国での就職支援体制を提案、模索したい」との方針をしめした。
 帰伯者向けの特別な再就職プログラムを考えると共に、連邦貯蓄銀行の協力によってFGTS(勤続年限保障基金)を日本でも引き出せるようにしたいという。
 「ブラジルの日系社会と在日ブラジル人社会は日伯間の絆であり、両国間をさらに緊密化させる重要な存在だと国は認識している」と締め括った。
 次に、サンパウロ州雇用労働関連局のマルコス・アカミネ・ウオルフ氏は、州政府が実施している就職支援サイトの説明をし、サンパウロ州オウリーニョス市のミサト・トシオ市長が九八年の就任時から帰伯デカセギ支援策として創設したデカセギ・センターの実績を発表した。
 同市長は「日本はブラジル人支援をしている世界でも数少ない国。帰伯者が順調に適応するよう我々も手を尽くすべき」と語り、ポ語のできない帰伯子弟のために、日系団体などと役割分担して市立校に日本語のできる補助教員を配置した他、セブラエのデカセギ起業家プロジェクトを最初に実施し、すでに百八十二人が受講したとの成果を発表した。
 さらにグルッポ・ニッケイの島袋レダ代表は、帰伯デカセギ向け「ただいまプロジェクト」への参加者が昨年までは月平均三十人だったが、世界同時不況の影響で今年から百二十人平均と四〇〇%も激増している様子を報告。
 それに伴い、完全なボランティアだけで運営されている同団体の負担も急激に増え、「今年十月六日に十周年を迎えるが、このままでは、その日が最後の活動になるかもしれない」との危機感を訴え、協賛企業からなどの協力を訴えた。
 最後にISECの吉岡黎明会長が「カエル・プロジェクト」の中間報告などの後、閉幕した。