盛和塾ブラジル、初の公開講座=体験通じ稲盛哲学に触れる

ニッケイ新聞 2009年6月26日付け

 盛和塾ブラジル(代表世話人=板垣勝秀)による初の公開講座が十六日午後七時から、地下鉄プラッサ・ダ・アルボレ駅近くの専用事務所で開かれた。稲盛塾長の写真や「経営の原点12ヶ条」が掲げられた真っ白なサロンには、カンピーナスやモジ・ダス・クルーゼス、スザノなどから二十五人が初めて参加し、塾生らも合わせ計四十人が稲盛哲学の話に耳を傾けていた。
 午後七時、板垣代表世話人の挨拶で始まり、日本を含め現在六十三カ所ある同塾の理念や海外での広がりを紹介した。
 続いて、入塾五年目で世話人の森田泰司塾生(60、埼玉)が体験談「盛和塾で学んだこと」を語った。
 森田さんは渡伯三十八年、女性用の装飾品の製造、販売の会社を経営して二十年になる。〇三年、その頃知人から同塾への勧誘もあり、稲盛塾長が文協で行なった講演を聴いて入塾を決めたという。入塾前は、「敷居が高くステータスを持ちたい人の集まりかな」とひがんだ心を持っていたというが、「馬には乗ってみろ、人には沿ってみろ」と思い、入塾してみると居心地よく感じた。
 その後、安い中国製が入ってくる時代になると、同業者の八割が倒産する状況に。そんな時、「経営哲学12ヶ条」を守ろうと決心し、朝礼を始め稲盛哲学の本を輪読、その後12ヶ条で謳っている事業の目的、意義が明確になったという。
 続いて入塾十二年目、「バナナ王」で知られる山田勇次塾生(62、北海道)が「盛和塾を思う」と題し体験談を語った。
 十一人兄弟の十番目で、十三歳で渡伯、自身を「甘えん坊で弱虫」と語る山田さんは現在、従業員千三百人、国内に八つの販売網をもつバナナ栽培と販売を手掛ける会社を経営する。
 九五年に新聞の案内で盛和塾を知った。当時、常に経営に対する危機感を持っており、入塾してからも「経営は哲学」と言われてもピンとこなかったという。
 しかし、勉強してみると「従業員が物心両面で満足を得られるように、思いやりをもって経営することの大切さ」を学んだという。山田さんは更に「いろいろ勉強するのも良いが、私は稲盛氏に賭けた。徹底的に信じたら成功は間違いないと思う。成功しないのは稲盛哲学を理解していないこと」と語り、「入塾しようと思っている人は迷わず稲盛さんを信じたら良い」と語った。
 山田さんは〇四年に行われた盛和塾の第十二回全国大会で体験発表し、最優秀賞に輝いた。〇八年には第三十八回山本喜誉司賞を受賞している。 この後、盛和塾の紹介DVDが放映され、質疑応答が行なわれた。
 初めて参加した駒形秀雄さん(72、新潟)は「実体験の話で、本を読むのとは迫力が違う。有益でしたが、あまり真面目すぎてついていけるのかな」と感想を語った。また、二十代の男性は「12ヶ条は読んだら当たり前だが、内容に深みがある。良い機会でした」と語った。
 板垣代表世話人は「経営哲学は自分の生活に役立つと信じている。ブラジルの狭い日系社会なので、経営者を集めてなんとか交流をしたい。敷居が高いのは私もそう思うが、見失わない程度に着いてきて欲しい」と初めての公開講座の感想を語った。その後、懇親会が開かれ、参加者同士、交流する姿がみられた。