コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年6月26日付け

 ここ数年で「Temakeria(テマケリア)」という聞きなれない日本語みたいなポ語が、ブラジルの新聞に氾濫するようになった。これは手巻き寿司専門店のことで、日本にもないブラジルで独自に発明されたレストラン形式だという▼手巻き寿司自体は昔から日本にあるが、専門店という形式はないようだ。ところがブラジルでは、発祥の地とされるサンパウロ市はもちろん、最も流行っているリオ以外にも、サルバドール、ポルトアレグレ、ベロ・オリゾンテ、クリチーバなどと主だった州都にはすでにある▼サンパウロ市一の繁華街ビラ・オリンピアのある店のメニューには「Nachomaki(ナッチョ巻き)」というのがある。サーモンの切り身、にメキシコ料理nachos(トウモロコシ粉でできたスナック菓子状のものにピリッとしたタレをかけたもの)、タバスコが入っており、和風の枠に、ブラジル的発想でメキシコ料理を混ぜ込んだ多国籍ぶりを見せる▼その他、「Macadamia(マカダミア巻き)」にはサーモンの切り身、マカダミアナッツ、マヨネーズ、ごま)が入っているし、「Camarao Tailandes(タイ海老巻き)」には焼き海老、甘辛ソース、胡椒、ごま油、味の素、ピーナッツ)などかなりこってり感がありそうだ▼日本では、各自が好きなものを巻いて食べるという「家庭料理」のイメージだったが、ブラジル風和食として〃洗練〃されつつあるようだ▼南麻州カンポ・グランデの郷土料理となった沖縄ソバと、その専門店「Sobaria」は知られつつある。将来、テマケリアが〃伯風和食〃として日本に紹介され、再上陸したら面白い。(深)