コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年7月14日付け

 北朝鮮が東京を狙いミサイルを発射すれば、どうなるか?もし、これに原爆を搭載しているとしたら人的な損害やビルが瓦礫となり壊滅的な打撃となる。しかもーである。「打て」の命令でボタンを押してから10秒で都心に着弾しあの広島と長崎の被爆という歴史的な大惨事になる。この恐怖の絵図を日本の人々はどれだけ認識しているのだろうか▼勿論、日本もミサイル防衛(MD)システムを保有しており、敵のミサイルを撃墜する能力は高い。北からわずか10秒しか掛からないけれども、それでも迎撃はできると防衛省の元最高幹部は語る。しかも、この人物は制服組でMD専門家なのだからーこの発言を信用したい。だがー「いや打ち落とせない」の意見が根強くあるのも事実なのである▼こんな話は奇想天外とする方もいるだろうけれども、今の北朝鮮の無軌道さを見れば、こんな危機も起こりうる。あの大東亜戦争でも、鉄鋼の生産能力を始め工業の力がアメリカに到底及ばないと知りながらの開戦である。北のミサイル発射は政治的な野心からのものだろうが、小型ながら核兵器も既に実戦に使える段階にきている▼こうした背景を考慮すれば、日本はもっと防衛力の増強に努力すべきは言うまでもない。去る4日にはミサイル7発を打ち日本海に着弾しているし、首相や官房長官が「遺憾である」と語るのは結構ながら実質的な内容を持つ政策の立案こそが大切なのではないか。MDの強化や敵のミサイルを探知する警戒機の導入もあるし、しっかりとした安全保障の確立を急ぐ必要がある。 (遯)