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日系士官候補生に訓辞=4割脱落する厳しい教育

ニッケイ新聞 2009年7月31日付け

 「日系人としての誇りを忘れずに、勤勉さ、真面目さなどその特質をもって任務を遂行すべし」。司令部入り口大サロン奥に飾られた〃飛行機の父〃サントス・ドゥモンの肖像画を前に、日系士官候補生約十五人を並べ、斉藤総司令官は特別な訓示を垂れた。
 約七万人の兵力を誇るブラジル空軍の士官は全員、この学校の卒業生だ。斉藤総司令官も六五年卒のトゥルマだ。
 ラファエル・ヒロシ・グアリネーリ中尉によれば、毎年百八十人が入学するが、卒業できるのは百人ていど。中でもパイロット養成科に進んだ者は四クラスに分かれ、厳しい試練が待つ。少なくとも百六十時間の飛行経験が必要とされ、「パイロットとして厳しく適性が問われる」という。
 ここの基地の花形は、なんと言っても伝統ある、曲芸飛行を披露することで有名なエリートパイロット隊「エスアドリーリャ・ダ・フマッサ」だ。煙を出しながら衝突寸前の近接飛行などを見せ、空軍の飛行技術の高さを技で証明する、ブラジル人飛行士なら一度は憧れるエリートチームだ。
 取材時も主軸パイロットは米国の航空ショーに出張中。トゥカーノとよばれる国産プロペラ機で行われ、「飛行技術の高さは世界一との評判です」とは、同テネンテだ。
 世界の公認記録を集めるギネス・ブックにも、「三十秒以内に十一機が離陸して裏返しになった」記録(〇二年五月十八日達成)が収められている。
 中川テレーザ中尉に空軍を選んだ理由を尋ねると、「父が空軍技官だったから自然にそうなりました」という。〇六年に卒業、空軍初の女性理学療法士として任務を遂行している。空軍には日系将官が比較的多いことで知られるが、「今のところ、私の知る限り、日系女性のパイロットはまだいないわね」。
 基地内には空軍歴史資料室もあり、遠藤マリオ予備大佐(六九年卒)の写真も飾られていた。卒業者全員を記した名簿もあり、同期百余人中、十位の成績で卒業していた。同期には六人も日系名がおり、日系の多さを裏付けた。
 同校で七一年から三年間、飛行術の教鞭もとった遠藤さん。「教え子は今、中将、大将になってるよ」と笑顔を浮かべた。
 翌十日には、新入生に小剣を渡す伝統行事があり、そのために総司令官は来聖した。卒業できた暁には長剣に代えられる。

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