道産子の開拓精神で90年=北海道協会=移民90年と創立70年祝う=高橋知事ら40人慶祝来伯

 北海道人ブラジル移住九十周年の記念式典が八月三十日午前十時過ぎから、サンパウロ市の北海道交流センターで開かれ、国内各地から四百人以上が訪れた。北海道からは高橋はるみ知事をはじめとする慶祝使節団が来伯。同会の創立七十周年、同センター建設十周年とあわせ、三つの節目を盛大に祝った。

 北海道人のブラジル移住は一九一八年、小笠原尚衛氏が一族五十数人とともにサンパウロ州奥ソロカバナのブレジョン植民地(現アルバレス・マッシャード)へ入植したことに始まる。
 その後戦前戦後を通じて約二万七千人が移住。現在の道人系人口は約十五万人とされる。
 北海道協会は一九三九年にサンパウロ市で発足。現在の会員は約八百家族で、サンパウロ市など国内八都市に支部がある。
 雲ひとつない快晴に恵まれた式典当日、サンパウロ、バストス、ロンドリーナ、ミナスなど各地から縁の人たちが参集した。
 北海道からの使節団は知事のほか、市町村訪問団(団長=谷川弘一郎・浦河町長)、伊藤芳朗・北海道商工会議所連合会名誉会頭、松田利民・北海道日伯協会長、北方圏センター代表など約四十人。
 ブラジル側からも、島内憲駐伯大使、大部一秋在聖総領事夫妻など日本政府関係者、ウィリアン・ウー、飯星ワルテル両連議はじめ日系政治家、与儀昭雄県連会長ら日系団体代表など多数の来賓が出席した。
 先亡者への黙祷、両国歌斉唱に続き、木下利雄会長は「北海道のフロンティア精神を子孫が受け継ぎ、社会の各界でブラジルへ貢献していることは大きな誇り」とあいさつ。同式典を「一世主体の最後の式典」と位置付け、今後も会を通じて後進育成が進むことに期待を表わした。あわせて、十周年を迎えた現センター建設当時に受けた道庁、関係者の支援に改めて感謝した。
 高橋知事は「移住一世、二世の不屈の開拓精神が子供たちの世代へ受け継がれていることを誇りに思う」と称え、同協会に対し「今後も北海道とブラジルの友好発展に尽力いただきたい」と述べた。
 連議、サンパウロ市議会などから知事、木下会長ら関係者へ感謝状、記念プレートを贈呈。知事から功労者三人(山田勇次さん、岡野脩平さん、佐藤泰司さん)と八十歳以上の高齢者百二十四人、北方圏センターから功労者二人(川南政雄さん、藤沢舟橋瑠璃子アンナさん)が表彰された。記念品の交換も行なわれた。
 功労賞受賞者を代表してあいさつした山田さんは、ミナス州ジャナイーバでバナナなど熱帯果実の栽培・販売を手広く手がける。「先人の血と汗と涙の上に私たち戦後移民の今がある」と感謝を表わし、「ブラジルの農業を私の力で少しでも良くしたい」と決意を新たにした。
 北海道が六四年から実施する道費留学、技術研修員(七七年から)制度。これまで南米から三百五十三人の子弟が先祖の故郷で学んできた。
 式典では六四年に第一回留学生として北海道大学工学部で学んだ吉井篤さん(70)と、〇八年度研修員の田尻えりかさんがそれぞれ挨拶し、感謝とともに、制度継続へ期待を表わした。
 最後に謝辞を述べた青年部「ひぐま会」の藤田エリオ会長は、「北海道の血を持って生まれたことは大きな誇り」と語り、「北海道人の勇気と勇敢さをもって夢を追いつづけていきたい」と宣言した。
 来賓一同で鏡割りを行なった後、知事、大部栄子総領事夫人、婦人部「はなます会」の水野誠子会長がそれぞれ、九十、七十、十周年のケーキをカット。祝賀昼食会をはさんで午後からは、サンバショーやヨサコイソーランで盛り上がり、その後も花柳龍千多さん、丹下セツ子さんの舞台、歌や三味線、民謡などが披露された。歌手の井上祐見さんも出演し、式典に花を添えた。
 ロンドリーナ市から訪れた沼田信一さん(91)は、今年で移住七十六年。「八十歳以上の人が表彰されて良かった。苦労は皆がしてきたから」と喜び、「式典が昔の事や、北海道の事を思い出す機会になれば」と話す。
 この日は小笠原尚衛氏とともに三歳でブレジョン植民地へ入植した小笠原直臣さん(94)も会場を訪れていた。十三歳で父親を亡くし、家長として二十歳まで一家を支えた植民地の思い出を振り返り、「印象的な式典でした」と話していた。