芸達者が勢揃いの文化祭=汎サントアマーロ連合文化協会=日語校も歌や踊りで活躍=「非日系と共に盛り上げ」

ニッケイ新聞 2009年10月10日付け

 汎サントアマーロ連合文化協会(田代正美会長)が主催する第15回文化祭がサントアマーロ文協会館で行われ、200人以上が研鑽してきた歌や踊り、芝居などを披露し、会場一杯の観客から喝采が送られた。次から次へと芸達者や日語校生徒らが舞台に上がり、中には非日系も混じっていた。来場者、参加者ら約400人は日本文化三昧の楽しい一日を過ごした。

 午前9時過ぎに始まり、午後4時過ぎまでたっぷりと80近いプログラムが詰まっている。ダンス、カラオケ、日本語学校による合唱や団体舞踊、劇など、盛りだくさんの内容だ。以前は演芸会だったが、途中から学習発表会も一緒になり、現在の文化祭になった。
 藤田ミゲルさんとマルシアさんダンスの後、同連合の演芸部長・佐々木則一さん自らが「男の一生」を熱唱し、文化祭の幕を切って落とした。
 25番目に「柔(やわら)」の舞を披露した大和さくらさん(66、長野)は11歳で移住してブラジル学校で教員資格を取り、以来、州立校で地理を教えていた。定年退職してから踊りを始め、もう10年になるという。「最近はもっぱら男役専門。マタタビ姿ででると、みんながキャーキャー喜んでくれるんです。時々、丹下セツ子さんですかなんて間違えられるんですよ」と嬉しそうに笑う。
 当日、頑張っていたのは日本語学校の生徒たち。中でも、昭和日本語学校は伝統的な「花笠音頭」から、躍動感あふれる新しいパラパラという団体舞踊「ハッピー猫」では特に楽しそうに踊り、盆踊り「松本ボンボン」なども披露し、盛んに拍手を浴びた。
 同校教師の狩股登美子さん(62、二世)によれば、現在38人の生徒がいるが、アニメなどの影響で非日系が増えており、「日本語の読み書きだけでなく、日本文化を教えることに重点を置く」という。踊りの時には浴衣を着せ、お茶の授業などを通して礼儀作法も教えるという。
 会場が一杯になった昼頃に開会式となり、最初に田代会長は「200年紀に向けての第一歩をすでに踏み出している。三世、四世にこの歴史を受け継いでいってほしい」とあいさつ。
 来賓の安部順二元モジ市長は「連合会がこのような団結を続けることは、日系社会にとってとても重要なこと。五世になっても日本文化を忘れないよう、しっかりと子供を教育してきた成果が今ここで披露されている。ブラジル発展のためにも日本文化継承を続けましょう」と呼びかけた。
 折田シゲロ書記も「ここには非日系人もたくさん来ている。日本文化を盛り上げるために、みんなが大切な存在」と語った。同書記は、唯一の日系州議の西本エリオさんの補佐官が本職、「今年年頭から繰り上げ当選したのでまだ知らない人もいる。州の関係の相談事があればいつでもどうぞ」と呼びかけた。
 途中から、羽藤ジョージサンパウロ市議も駆けつけ、来年の選挙では州議に出馬する意向であることを明らかにし、「7期の市議経験を州でいかしたい」との抱負を語った。
 昼から披露された、レプレーザ連の阿波踊りでは非日系人も混じって、中腰姿勢のみごとな粘りを見せていた。指導する長井アメリアさんによれば、100周年で非日系人がたくさん入り、昨年6月のサンボードロモで披露したときは200人もいたという。現在は70人だが非日系も数人残って続けているという。「広まってますよ」と微笑んだ。

汎サントアマーロの歴史=聖南地区でも百周年祝う

 今年59回を数えた汎サントアマーロ相撲大会。これを主催するために組織されたのが、同連合文化協会だ。傘下にはサントアマーロ、昭和、ジョン・ブランコ、カーザ・グランデ、シッポー、パリリェイロス、コロニア・パウリスタの7文化協会がある。
 連合の日本語書記の柘植博嗣さん(ひろし、76、静岡)によれば、「戦前にモルンビーにファゼンダがあって、そこで小作などをしていた人が、だんだん町になるっていうんでサントアマーロに移ってきて、こっちでも相撲大会をやろうってことになった」という。
 「第1回大会の前年か前々年には創立しているはずだという」。つまり、本当は今年か昨年が同連合創立60周年だという。
 現在は全体の家族会員数は400家族ていどだが、「端から端まで行くと車で2時間かかる」(田代会長)と地域が広いだけに、実際は3千家族近くが住んでいると見られている。田代会長が住むコロニア・パウリスタもサントアマーロ会館から30キロ、シッポーは40~50キロもあるという。
 柘植さんによれば、実際に70年代までは、1300家族の会員がいて、相撲以外にも陸上が盛んだった。指導者がデカセギにいってしまったり、競技人口が減ったりで6年前に陸上部は廃止された。現在は3校しかない日本語学校も、盛んな当時は13校もあった。
 汎サントアマーロ連合を中心に、聖南地区には21日系団体があるという。サウーデ以南、シダーデ・アデマール、ブルックリン、ジャバクアラ、イタペセリッカ・ダ・セーラ、サンベルナルド、クバトンまで入ると言うからまさに広大な地域だ。
 昨年9月13~14日に初めて聖南地区が力を合わせて、100周年を記念した合同イベントをインテルラーゴスのサーキット内カート場で行った。実行委員長を務めた折茂シゲロさんは「2万2千人が来場。第1回としては上々だったと、みんなに喜んでもらいました」という。
 「汎サントアマーロが団結して中心になったからできた。来年か再来年にはまたやりたい。だって準備に一年ぐらいかかりますからね」。ここでも新しい動きが百周年を機に始まっている。

ある日突然の〃目覚め〃

 サントアマーロ連合文化祭の演目の7割を占めるのはカラオケ。そこで130人もの生徒をもってカラオケを教えている渕田ケイジさん(61、二世)=写真=は変わった経歴を持つ。元々はブラジル独特のセルタネ―ジャ歌手で、バンドを組んで15年間もサンパウロ州地方部を巡業する生活をしていたという。
 「ある時、偶然カラオケで演歌を歌っているのを聞いて、自分で歌い始めたらすっかり面白くなっちゃって、以来、演歌一筋。カラオケ教師になって6年。それまでは日本語もほとんどしゃべらない生活だった」という。ある日突然、日系人として〃目覚め〃たようだ。
 セルタネージャと演歌の違いを問うと、「セルタネージャにコブシはないが、泣きの入ったメロディは演歌と同じ。歌い方も同じ様なモノだが、セルタネージャを歌うときはブラジル人の気持ちで、演歌は日本人の気持ちで歌わないと感じが出ない」と秘訣を明かした。(深)

サントアマーロ=連合支える婦人会=「チームワークで勝負よ」

 汎サントアマーロ連合婦人会長の吉井友子さん(75、二世)は部長歴10年、「みんな馴れてるから」とチームワークの良さを強調する。特に料理部長の篭原(かごはら)サダエさんの存在が大きいという。
 前日の下準備はもちろん、当日も25人以上が手伝っている。傘下の日系団体の婦人部から2~3人ずつ協力してもらっている。300人分以上用意したが、ほとんどなくなった。「美味しい」との声があちこちから聞こえる。
 18日には連合婦人会のバザーも同会館である。「会員には生産者が多いから、新鮮な野菜をフェイラより安く売るわよ。ぜひ買いに来て」。