コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年10月20日付け

 セーヌはパリの風情を高めて盛り上げ、遊覧船がゆったりと浮かぶ。フランスというとーなんとなく文化の匂いが濃いような印象が強い。あのルーブル美術館が蒐集した古代エジプトやギリシャの絵画と彫刻はやはり凄い。DVDでの観覧ながらーあのセーヌの川がパリの町を艶やかに彩っているのは、間違いない▼ロンドンにはテムズ川が貫流し、東京には隅田川が蕩蕩と流れる。江戸の頃には屋形船が散見され、急ぎの客は猪牙舟(ちょきぶね)で突っ走った。小さいが早く、吉原通いの若い衆がーはち切れんばかりの元気さで駆けつける風流と意気地は古川柳に多い。ここにも江戸町人らの「文化」が鮮やかに華を咲かせて遊びの楽しさを満喫しているのは悦ばしい▼江戸は掘割の町であり家康が命じ掘削させたものだが、これも隅田川の水を使い物の運送や市民の往来を大いに助けた。と、こんな話を綴るのもカナル5がチエテ河の水質調査に取り組み「汚染は酷い」の放映をしているからである。日本の円借款と技術でサンパウロ市近辺は浚渫され堤防も改築し、紺碧ではないが青い流れになってはいる。だがー下流は洗剤の泡に満ち綺麗な河には遠い▼しかも、市民らとの付き合いもまだまだである。その昔は清流だったし、これは環境公園にある「チエテ博物館」の写真を見ればよくわかる。若い娘さんが水着で遊ぶ風景などがあり、みんなが清冽な流れに親しみ愉快なひとときを楽しんだのである。ボートを漕ぐもよし、河辺の散歩もいい。この往昔の悦びと愉しみをぜひとも再現したい。 (遯)