北東伯開発に日本企業進出を=国家統合省が説明会=「世界の食糧基地になる」=会議所会員ら22企業に

ニッケイ新聞 2009年11月12日付け

 「この流域は世界の食糧生産基地になる可能性を秘めた場所。ぜひ日本企業、日本人とともにプロジェクトを進めたい」。ブラジル日本商工会議所の啓発委員会(前田一郎委員長)が主催する「サンフランシスコ河流域開発プロジェクト・セミナー」が10日午前、サンパウロ市内の大統領府サンパウロ事務所で行われ、国家統合省のナンバー2、ジョアン・レイス・サンターナ・フィーリョ事務次官は、参加した22社からの約30人を前に、3時間近い熱弁をふるった。

 「ブラジルは今まで富が南西部に偏重してきた歴史がある。国としての足腰を強くするためには、輸出に頼らなくてもすむよう、全体としての国内消費を盛り上げることが必要。現在貧困にあえぐ北東部を開発して世界に冠たる食糧生産基地にすることは、ルーラ政権の悲願です」。
 大統領と同じく北東部出身のサンターナ事務次官は、9州にまたがって156万平方キロの面積を持ち、5300万人の人口を持つ同地域の特徴を、「温帯ではブドウは年1回しか収穫できないが、半乾燥地の北東部なら何回でもできる」と強調する。
 主に欧米向けに果実の生産がすでに盛んで、特にブドウはフランスに輸出され、ワインに加工されるようになったという。
 特に、成分の50%が植物性油として利用できるマモナの生産を推奨し、「これぞ〃神が与えた作物〃。世界広しといえどこれほど有用な植物はない。半分は油、残りからはグリセリンなどの副産物もあり、カスは肥料になる。この肥料はリシンを含んでいるのでネマトイゼ(害虫)をよける」という。「半乾燥地に適してわずか60日で収穫でき、とれた油は零下55度まで凍らないから南極でも使える。植物繊維は抗アレルギー性だ」と畳みかける。
 北東部の母なる水源サンフランシスコ河は、ミナス州を源流とし、バイア、ペルナンブッコ、セルジッペ、アラゴアスなど通過して2700キロにもなり、流域面積は実に64万平方キロもある。
 同河の平均流量は秒あたり2980立方メートルもあり、「うち1・4%を灌漑に利用しているだけなので、環境に問題はない。ピラシカーバ川の水の70%をサンパウロ市の水がめとして使っているのに比べれば、なぜ環境問題として批判の対象になるのか理解できない」とし、36もの関係保全プロジェクトが同時並行して進められている現状を説明した。
 世界の耕地面積の82%が灌漑なしで、全体の56%の農産物を作っているのに対し、灌漑した耕地は18%で44%を生産しているとのデータを示し、「灌漑こそ世界の食料事情を変える」と述べた。
 その上で、世界の灌漑の現状として、灌漑面積世界一のインドでは利用可能面積の21%にあたる5580万ヘクタールの耕地が灌漑され、2位の中国は19%にあたる5460万ヘクタールだが、17位のブラジルは1%しか灌漑しておらず290万ヘクタールにすぎないので、「まだ小規模な灌漑しかなく原始的とすらいえる。でもその分、開発余地が多い」とする。
 最後に同事務次官は、現在政府が進めるPPP(官民連携プロジェクト)を日本企業が活用すれば、その耕地を開発するためにインフラなどの設備投資にかかった費用を、25年間かけて政府が払い戻していくのみならず、その間は、民間事業としてその土地からの収益を利益にすることが出来ると説明し、「すでに12万ヘクタール以上が灌漑を完成し、企業が入るのを待っている」と勧め、締めくくった。
 これに対し、前田委員長は「この開発が今後のブラジル経済発展に寄与することがよくわかった。ぜひ一度現地を見学したい」と語り、今後の連絡を密にする旨を提案することで応じた。