にっけい文芸賞決まる=散文賞に安良田氏=ポ語部門にオクバロ氏

ニッケイ新聞 2009年11月13日付け

 ブラジル日本文化福祉協会(木多喜八郎会長)の「第39回にっけい文芸賞」(にっけい文芸委員会、浜照夫委員長)の選考結果がこのたび発表された。日本語部門は20冊以上の応募があった中から、散文賞に「日系コロニア文芸(下巻)」(安良田済)、韻文賞に合同歌集「祖国はるかに」(多田邦治刊行委員会代表)、特別賞に50年記念誌「もっこす100年の歩み」(宮村秀光刊行委員長)が選ばれた。
 日本語による文芸を奨励、その振興と普及を図る目的で設けられた同文芸賞。今年から散文、韻文賞が設けられ、浜委員長によれば、ほぼ満場一致で審査が決定した。
 『日系コロニア文芸(下巻)』は、94歳の安良田さん(山口)が40年かけて集めてきた膨大な資料を一冊にまとめあげたもの。「戦前・戦後の移民文学の歴史が事細かに書かれており、価値のあるもの」(浜委員長)として評価された。
 40年かけて集めた新聞の切り抜きなどの資料は200冊にのぼる。ニッケイ新聞の取材に対し「努力と辛抱があれば誰でもできる仕事です」と謙遜しつつ、資料集めを「死ぬまで続けて残していきたい」と笑う。
 「94歳の今まで、一つも賞など貰ったことなかった。これで、亡くなられた文学の大先輩たちと合流するときの土産話ができました」と感慨深そうに語った。
 韻文賞の合同歌集「祖国はるかに」は、134人の歌人による2500首もの歌をまとめたもの。
 「大半の歌人は準二世。幼少時代にブラジルにわたり、独学で百姓の仕事をしながら読みつづけ、楽しんでいる。汗と戦いが伝わってくる」と浜委員長は評価のポイントを話す。
 特別賞は昨年、移民100周年と県人会創立50周年を祝した熊本県人会の記念誌「もっこす100年の歩み」が選ばれた。
 なお、今年からポルトガル語部門が復活し、ジョージ・J・オクバロさんの「オ・スジト」が入賞、ルシア・ヒラツカさんの「オス・リブロス・デ・サユリ」とジュリオ・ミヤザワさんの「ヤワラ」が佳作だった。
 19日午後7時からリベルダーデの文協ビル貴賓室で授賞式が行われる。出席者は16日までに文協(11・3208・1755)まで要連絡のこと。
 選考委員は日語部門が浜委員長、林まどか、鈴木雅夫、永田翼、中田みちよ、富重久子、小野寺郁子、水野節子、広川和子、斉藤早百合、ポ語部門が大原毅、半田フランシスコ、織田順子、後藤田玲子、藤山洋児、畑中ミリアン、西銘光雄の17氏。