カエル・プロジェクト=〝母国〟での初ナタル=子供たち100人が笑顔=中川代表「ブラジルの雰囲気味わって」

ニッケイ新聞 2009年12月17日付け

 〃母国〃での初ナタルに笑顔あふれ―。ISEC(教育文化連帯学会=吉岡黎明会長)で昨年創始されたカエル・プロジェクト(中川郷子代表)は「フェスタ・デ・ナタル」を12日午後、サンパウロ市アルト・デ・ピニェイロス区にある学校「ジ・カヴァルカンチ」で開催した。世界経済危機以降に帰国したデカセギ子弟ら約100人、父兄やボランティア30人が参加した。ブラジルで初めてのナタルを過ごした子供たちもおり、独特の雰囲気を楽しんでいた。吉岡会長、上原幸啓前文協会長、千坂平通JICA所長も出席した。

 同プロジェクトは昨年6月に立ち上げられ、帰国子弟の支援を目的とする。サンパウロ州立の小学校14校で心理面での教育支援をするほか、今年9月には「カエルの教室」を開講、約10人の子供たちに無料でポルトガル語の授業を行っている。
 中川代表によれば、「経済危機後の帰国子弟の増加に伴い、各地で支援の要望も急増している」と話す。
 フェスタの最初に、吉岡会長は、「皆さん、家族と共に困難を乗り越え仕事や学習に励みましょう」とあいさつした。
 「カエルの教室」の生徒のほか、同プロジェクトが活動する公立学校9校の子供たちが参加。バレエやダンス、歌、劇などを披露したほか、琉球國祭り太鼓の演奏で盛り上がった。
 ボランティアと一緒に様々な遊びに興じる子供たちに、会場からは、「ガンバレー」という声も飛び出した。
 フェスタの最後に、訪れた子供たち一人一人にプレゼントが贈られ、あちこちで子供たちの歓声が聞こえた。
 中川代表は、「ナタルは、私たちブラジル人にとって1年で一番大切な行事。ブラジル独特の雰囲気を味わってほしかった」と子供たちを見遣った。

父兄の思いそれぞれ=~支援金での帰国者も~

 「日本のクリスマスが恋しくなるんじゃないかな…」。日本に10年滞在、失職したことから、今年帰国したアルノビオ・シャビエル・マトスさんは、複雑な思いで、息子ユウジ(7)、ユウイチ君(4)を眺めた。
 二人とも日本生まれ。ブラジルでのナタルは初めてだが、他の子供たちとゲームを楽しむ姿にマトスさんの心配顔も柔らいだ。
 「今日、サンタさんは来るかな?」と目を輝かせる萩原ビアンカちゃん(7)も母国でのナタルは初めて。
 今年9月、母タミレスさん(25、三世)、弟ダニーロ君(6)と帰国支援金を適用して帰国した。
 長野県の公立小学校に入学したが、「1年半続いたいじめに耐えられなかった」。
 現在は公立学校の2年生。「今の学校では友達とは仲良くやっています」と話すタミレスさんの笑顔をよそに、「パパイはまだ日本にいるの」とビアンカちゃんの表情が曇った。
 「群馬県の車の部品工場での仕事を失った」という浅田マサキさん(46、二世)と一緒に今年8月に帰伯したのは、双子の娘ゆりえさん(15)とゆみさん(同)。
 「母と3人の兄弟がまだ日本にいるので家族バラバラ。寂しいけど、10年ぶりのナタルは懐かしい」。現在、「カエルの教室」でポ語を勉強中だ。
 自身は帰国支援金を適用したというマサキさんだが、「いつか日本で勉強したいと願う子供たちの分は、そうしなかった」と話した。