コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年12月25日付け

 毎年百人ぐらいの個人・団体から年賀状をいただく。お歳暮もその年に書いたことへの成績表だと思い、年末のこの場を借りて、読者や日系団体のみなさんに深く感謝したい▼今年取材した中で個人的に特に印象に残っているのは、二世中心に盛り返してきたトメアスー農協だ。同地で80年前に主作物として期待されつつ涙をのんだカカオが、この年末に日本に初出荷され、節目の年にふさわしい締めくくりとなった。また同農協理事の小長野道則さんが、この年末、東京の国連大学が主催する森林農法シンポで発表しているのも錦衣帰〃国〃といえる▼さらに9月に50周年を迎えたノロエステ連合、増えている日本庭園や鳥居、漫画アニメや日本食ブームの進展、ロンドリーナの新世代台頭なども心強い▼時代の移り変わりを悲観するのは世の常で、ふだん「日本語が使える場が減った」「昔のような大物リーダーがいなくなった」と愚痴ることが多い。しかし、そのような現状を苗床に、確実に新芽も育ってきている。事実、百周年のマスコミ報道に象徴されるように、今ほど日系人や日本文化が影響力をもったことは、かつてなかった▼日系社会は一方的な滅びへの道にあるのではなく、むしろ、日本文化が広がってブラジル社会に適応する過程、いいかえれば「日系文化」に生まれ変わる〃再生〃の過程にいると感じる▼日本移民は農業で一般社会からの信頼を得た。今はどんな花が咲くか分からない文化的〃新芽〃でも、100年後に大輪が咲き誇るよう見守ることも、移民2世紀目にいる我々の大切な役目だろう。みなさん、楽しいXマスと心豊かな新年を。(深)