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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年1月29日付け

 ブラジルが国内総生産(PIB)を年率5~6%で経済成長させ続ければ、あと10年ほどで世界5位の大国になる――との予測が話題になっている。08年は10位だった。計算上の話だが、30年ごろには日本を抜いて4位になるとの発表もある▼5位と聞いて、思い出すことがある。ブラジルは国土面積がロシア、カナダ、中国、米国についで5番目であり、人口も中国、インド、米国、インドネシアについで5位だ。つまり元々、自然条件や人口から考えて、それぐらいの存在感があって当然なのだ▼では、なにが10位にさせているかと言えば社会格差だ。一人あたりのPIBは世界64位と低い。EU最大の社会格差を持つ旧宗主国ポルトガルの遺伝子を引き継いだのだろう▼歴史的に見るとブラジルは1980年、〃ブラジルの奇跡〃の最終年にPIBで8位になったことがある。その後、ハイパーインフレの泥沼に沈んでいる間に中国、インドに抜かれた▼興味深いのはBRICS(伯ロ印中)と呼ばれる新興国群はみな国土が広いことだ。ロシア以外はかつて植民地時代を持つ国々であり、歴史的に呪縛されていた経済発展が、今世紀に入り、ようやく本来の地位を得ようとしている▼田中宇さんが書くように、かつて英国やスペインなどの宗主国は植民地を独立させるときにバラバラに分断した。そのような歴史的呪縛が何十年、百年がかりでその国の歴史に影響を与える。ハイチしかりだ▼1822年、ドン・ペドロ一世は領土を分断せずにポルトガルからの独立を宣言したが、奇しくもブラジルがPIB5位になるのは独立200周年の頃かもしれない。(深)

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