秋田県・無明舎=安倍舎主が8度目の来伯=「トメアスーに惹かれて」

ニッケイ新聞 2010年2月13日付け

 日本で珍しい地方出版業を40年近く続ける秋田県秋田市の無明舎出版の安倍甲(あんばい・こう、60、秋田)舎主が1月20日から3日まで来伯、うち6日間をパラ―州のトメアスー移住地で過ごし、今後の出版計画の下準備を行った。
 秋田大学時代の友人を訪ねて初訪伯したのは77年。当時、出版業を初めて5年目、「県内あちこちで取材していて『その人は移民した』という言葉に突き当たり、移民を身近に感じていた」と振り返る。
 当地でサンパウロ人文科学研究所のメンバーと知り合い、ブラジル移民関係の書籍を手がけるようになる。「今までに20点ほど出した。日本で一番でしょう」と自負する。
 事実、画文集『ブラジル移民の生活』(半田知雄)、『ブラジル日系社会考』(中隅哲郎)などの貴重な移民関連本が続々と出された。
 「東北の自然、歴史、民俗を耕す」を方針に、郷土色にこだわった書籍を出し続けており、東京中心の出版業界の流れに逆らった地方出版として気を吐いている。『雪国の農具と民具』(平田貞雄)など年間20~30点、計1千冊以上を出してきた。
 今回8回目の来伯。「常に主流(東京)から外れたところで本を出している。誰も出さないところに光を当てるのが仕事。だからサンパウロよりトメアスーに惹かれる」と笑った。