敬語に表れる〝心〟=国際交流基金=池津さん講演に90人=「付き合う」能力を

ニッケイ新聞 2010年2月20日付け

 日本語教育専門家の池津丈司さん(49、東京)の講演が7日午後2時から、国際交流基金サンパウロ日本文化センターで開催された。テーマは「心と心の日本語教育」。約90人の日本語教師らが参加し、熱心に耳を傾けた。
 池津さんは、国際交流基金の派遣によりこれまでタイ、インドネシア、インド、ロシア、パプアニューギニアで日本語教育の普及に努め、ブラジルは6カ国目、昨年10月同センターに着任した。
 講演会では、文部科学省の敬語の指針に言及して「日本では新しい敬語がどんどん増え、ビジネスにおける会話はより丁寧になっている」と指摘、日本で使われる最新の敬語の用法を説明した。
 例えば「お話しになって いただきます」のように敬語を重ねる「二重敬語」は、以前は過剰とされていたが、一般的に多く使用されるようになり、新たな敬語として認められるようになった。
 クイズを交えながら、日本人でも陥りやすい敬語の誤法を場面ごとに紹介、文法的に解説すると会場には頷く声が溢れた。
 池津さんによれば、敬語の使用には相手への敬意だけでなく、誉める、謝る、勧める、頼む、誘う、断る際などに話者の気遣いも表れる。
 各言語で謝り方や頼み方など表現が違ってくる点に言及、「『伝える』能力よりも『付き合う』能力が重要」と強調し、「日本語を教える際にも文法だけでなく、日本語らしい表現方法、そしてその裏にある意味を教えなければ」と訴えた。
 その学習例として、日本語を母語とする部外者を招き、生徒に交流の機会を与える「ビジターセッション」を挙げ、過去のセッションの様子を紹介した。
 15年間モルンビーの公文日本語教室で指導にあたってきた小笠原泰子さんは、「日本の敬語が変ってきているのが残念。伝統的な敬語を伝えていきたい」と考える。
 娘の日本語教育を考えてきたという金川セシリアさん(二世、44)は「新しい敬語が増えていることに驚いた。敬語の使い方は以前にまして複雑、日本の社会に入るにはきちんと知識を身につけなければ」と話していた。
 来場者で埋め尽くされた会場に「こんなに日本語が残っている地域は珍しい」と驚く池津さん、「要望があれば、ぜひ各地で講演を行っていきたい」と笑顔で語った。
 問い合わせは、同センター(電話=11・3288・4971)まで。