日本を好きになった1カ月=日本語センター=JICAの日語生徒研修=5人がそれぞれの思い出発表

ニッケイ新聞 2010年4月2日付け

 JICA(国際協力機構)による「日本語学校生徒研修」が今年も実施された。ブラジルからは10人の日系子弟が訪日し、他の南米各国からの参加者とともに約1カ月間日本を体験。帰国後の3月17日にサンパウロ市のブラジル日本語センターで報告会が開かれ、5人が忘れられない思い出を発表した。

 同事業は中南米などの日本語学校に通う13歳から15歳程度の日系子弟が訪日し、移住の歴史や日本について学ぶもの。
 今年、ブラジル国内からはサンパウロ、パラナ、マット・グロッソ各州の10人、他の南米諸国をあわせ37人が参加。1月から2月の初めまで日本に滞在し、JICA横浜を中心に、移住学習や文化体験、ホームステイ、中学校への体験入学などを通じて日本に触れた。
 発表会に参加したのは、今井エドアルド純治さん(山本塾)、滝田ステファニー八重美さん(椎の実学園)、米田カーレン直美さん(アチバイア兼松教室)、広瀬カーレン亜佐美さん(コロニア・ピニャール日本語モデル校)、福谷マリアナゆりさん(聖母学園)。当日は研修生の家族や、日本語学校の教師などが訪れた。
 日本語センターの谷広海理事長は「日本の良い所をたくさん見て、友達もできて、良かったと思っていると思う。その喜びを伝える感謝の心を形に表すことが、あなたたちをすばらしい人格にします。お父さんお母さんや家族、先生、JICAの皆さんへの感謝の心をもって生きてほしい」と研修生たちに語りかけた。
 発表はそれぞれが自身の原稿を読み上げ、その後自分たちが写した写真をプロジェクターで上映しながら、日本での思い出を紹介した。
 電車やバスなど「日本人は時間を守ると感じた」という今井さんは、「最初は少し恥ずかしかった」が、「一日一日が楽しくて、研修が終わるころには友達の輪も大きく広がり体験も豊富になった」と話した。
 米田さんは地元中学校への4日間の体験入学の経験を振り返った。生徒たちによる日本文化の発表や扇子作りの体験のほか、研修生たちが最終日にそれぞれの国について紹介。米田さんは和太鼓演奏も披露した。「皆いろいろと接してくれて、多くを学び、たくさんの友達ができた4日間でした。一生忘れられない友達です」
 滝田さんは滞在中長野県の親戚を訪れ、ひいおじいさんの住んでいた所も訪ねたという。和歌山県でのホームステイ、その後の京都旅行の思い出や、「きれいですごくおいしい」日本の料理の写真などを紹介。「日本に行って、同じ年の日本人たちと日々を過ごして、私たちとの考えの違いを見ることができた」と話す。研修でできた友達の思い出に触れて涙ぐむ場面もあった。
 「見られないだろうと思っていた」雪を研修の終わりに見た感動を語った広瀬さん。移住学習や算数、美術、環境教育などJICAで受けた授業の思い出、「一番よく日本を感じることができた」ホストファミリーとの出会い、中学校での生徒たちとのレクリエーションなどを振り返り、「一番心に残ったのは日本人の暖かさ」と話した。
 最後に発表した福谷さんは、研修を通じて「日本とブラジルの文化、歴史、そしてマナー、それぞれの違いを学び、知識を深めることができた」という。「日本の家族の生活を知ることができ、その家族は暖かい気持ちで待っていてくれた」とホームステイの経験を振り返り、「帰りたくないほど日本を好きになった」と話していた。