コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月14日付け

 3月初旬に来伯した小泉純一郎元首相が、ブラジル日本商工会議所のメンバーと懇談会をした際、「ぜひデカセギ帰国者を優先して採用して欲しい。彼らは日本経済を支えた貢献者。日本企業のやり方もよく知っている大事な人材だ」と強く訴えたという。まったくその通りだと膝を打った▼先日も北東伯で必要な人材を、わざわざ日本にまで募集に行ったブラジル企業の話が報じられていた。ペルナンブッコ州イポジュッカ市の造船会社から質の高い溶接工の人材集めの要請を受けた派遣会社が、愛知県豊橋市で逆リクルートし、帰伯希望の在日ブラジル人溶接工82人と雇用契約を結んだという記事(3月15日付けエスタード紙)だ▼金融危機以来、弊社にも帰伯したばかりの就職希望の若者が履歴書をもってくることが増えた。もちろん、前記のような優秀な人材ばかりではない。日本で中学卒業と聞いて、弊紙を音読させたらお手上げだったりする。しゃべる分にはまったく問題がないのだが、読み書きに関しては日本語でもポ語でも難点がある▼それでも我々は将来の日系社会のためにも、帰伯してくる者に就労機会を与えるべきだろう。これは進出企業だけに言えることではない。県人会から地方の文化協会、日本語学校に至るまで、なんらかの雇用機会があるところでは、積極的に帰伯者を雇うべきではないだろうか▼日本で必要とされなくなって帰らざるをえなくなり、この上、ブラジルでも居場所がなくなれば、彼らは流浪の民となってしまう。帰伯者の中から路上生活者や犯罪者を出してはならない。もちろん限界はある。でもできる限り心がけたい。(深)