デカセギ=留守家族の扶養義務放棄=上院公聴会で問題指摘

ニッケイ新聞 2010年4月16日付け

 15日付エスタード紙は、デカセギで日本に渡った日系人が、ブラジルに残る家族への扶養義務を放棄し、約300家族が取り残されていると報じた。
 妻アパレシーダ・マルガレッチさんと2人の息子を残し、カヤキ・マリオ氏は日本へ渡ってから15年が経つ。同氏は日本から家族へ仕送りを行っていたが、1999年から消息が途絶えた。
 アパレシーダさんは離婚手続きを進め、慰謝料を得ようと同氏を探したが、その手がかりは掴めなかった。
 ミナス・ジェライス州民事裁判所第2法廷のロドリゴ・デ・オリベイラ判事は、14日、上院外交委員会の公聴会で「ブラジルの扶養義務に関する司法は整っているが、デカセギのケースには有効でない」と指摘、「法廷で有罪判決を下すことはできるが、その判決内容を日本で施行できる外交上の公約がなく、被告人は無罪放免と何ら変わらない」と説明した。
 サンパウロ州裁判所の統計によれば、サンパウロ州が全伯で最もデカセギに関する訴訟件数が多く、2005年には2425枚の有罪判決を通告する裁判嘱託書が日本へ郵送された。
 そのうち1122件が扶養手当、509件が離婚、570件が父親鑑定、224件が犯罪絡みの訴訟となるが、その裁判嘱託書の8割は未着だ。
 ブラジル外務省によれば、もし日本にいる被告の行方が見つかったとしても、被告には判決に従う義務はない。日本で直接に訴訟を起こすことも可能だが、その費用は膨大でブラジルに残された扶養家族には難しいとされる。