コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月29日付け

 来年6月に高拓生の初入植80周年を祝うアマゾナス州のヴィラ・アマゾニア。日本高等拓植学校の卒業生(高拓生)249人が戦前に入植した。「お金持ちのボンボンが遊びに行ったようなもの」とも言われ、実際、血気盛んな若者だけに様々な問題を起こしたらしい▼だが「アマゾンに理想郷を」と開拓に燃えた上塚司の精神に呼応した純粋な青年たちであり、アマゾン経済を変えたジュート産業に大きな足跡を残してもいる。満州開拓の歴史に隠れた日本の近代史に特記すべきこの史実を日本側で知る人はいない。「現地でも忘れられようとしている」と嘆くベレン高拓会の小野重善会長が記念行事を進め、式典の出席も呼びかける(28日本紙7面)▼時期は多少ずれるが、県連「ふるさと巡り」で企画できないだろうか。昨年のアマゾン80周年には過去最多の211人が参加、関心の高さを示した。上塚司、尾山良太の名を冠した学校、高拓生や家族の墓石が今も残り、式典では八紘会館のイナウグラソンも。〃見どころ〃は満載だ。記念誌編纂の計画も進む。高拓生は現在3人。遅きに失した感はあるが、健在の妻は各地にいるとか。開拓を支えた女性の声も取り入れたものにして欲しい▼サンパウロでこれを支援するのは、文協選挙に出馬、地方日系団体とも関係を深める高拓二世の小川彰夫氏。「現地に行ったことはなく、父・正夫からも話を聞いたこともないが何かの縁」と協力姿勢を見せる。パリンチンス、マナウスでも関係者らが活動を始めた。あと1年強。しっかりと受け継いだ〃高拓魂〃をこれから大いに見せつけて欲しいものだ。(剛)