静岡県=郷愁誘う「母国の味」=ジャボチカーバ人気呼ぶ

ニッケイ新聞 2010年4月30日付け

 【静岡新聞】ブラジル原産の果実ジャボチカーバの摘み取り体験ができる静岡市駿河区丸子の農園カフェが、母国への郷愁を誘う憩いの場として県内外に暮らす日系ブラジル人らの人気を集めている。昨年10月に開園して以来、日本人客とほぼ同数の300人以上が来園した。経営する西川宜成さん(44)は「予想外の反響」と驚いている。
 ジャボチカーバは、幹や枝にブドウとよく似た実を直接付けるのが特徴の果樹。ブラジルでは一般家庭の庭先に植えられていることも多い。同園では約7年間かけて約130本の苗木をハウスで育て、ほぼ年間を通じて収穫できるようにした。
 長野県諏訪市から一家5人で訪れた川西クリスチーナさん(39)は「日本で生まれた息子に母国の味を知ってもらいたかった」と来園の理由を話す。夫のケンジさん(25)は「ブラジルの田舎で暮らしていた子供の時に、よく友達と摘み取って食べた」と懐かしそう。地元の公立小に通う息子のイオリ君(6)は「イチゴと同じくらい甘くておいしい」と喜んだ。
 職場の日本人の紹介で妻と子供2人で来園した菊川市の新井田テルキさん(40)は「母国を離れ16年ぶりに味わうことができて、とてもうれしい」と笑顔を見せた。
 西川さんは「インターネットや口コミで、日本のブラジル人社会に情報が自然と広まったようだ」と話す。多い日には一日で50人近くのブラジル人が訪れるといい、ポルトガル語の会話本を農園に置いて対応している。
 西川さんは「国内では珍しい果実。日本の人もぜひ一度味わってほしい」と呼び掛けている。