日本語版百年史=1冊目を年内刊行へ=農業編小委員会を解散

ニッケイ新聞 2010年4月30日付け

 27日の百周年記念協会の定期総会では、百年史日本語版編纂委員会(森幸一委員長)の現状報告も行われた。
 最初に出版される予定だった『農業編』の進行が大幅に遅れた上、編纂委員会と田中規子コーディネーターとの意思疎通が困難になったことから同職を解任して執筆に専念してもらい、その後、農業編小委員会も解散したことを報告した。
 『農業編』は現在、内容構成の練り直し作業が進められており、5月以降に改めて別の小委員会を招集することになったという。しかし提出原稿のデータが、解任された同コーディネーターから編纂委員会に届いておらず、その後の作業に支障を来しており対応策を検討中だという。
 その事態を受けて、刊行順序の入れ替えも含めた根本的な対策が練られており、『生活文化編1』や『産業編』を優先する方向で刊行計画全体を見直している。
 『生活文化編1』には日系文学史、日系メディア史、日系女性史、日本語教育史、日本食の文化史、日系宗教史などが含まれる予定になっており、年内刊行を目指して執筆作業が急ピッチで進められている。
 『産業編』では、各分野の代表企業に業界事情をいれた社史を書いてもらい、総論や関連補足をコーディネーターが埋める形で執筆している。
 これらは、百周年東京式典に合わせて08年4月に同編纂委員会により刊行された写真集『目で見るブラジル日本移民の百年』と同じ風響社から、今後全5巻を発刊する方針が確認された。
 また森編纂委員長は「全巻刊行にはまだまだ資金が足りない。さらなるみなさんのご協力を仰ぎたい」と呼びかけた。
 当日、ポ語版編纂委員会に関して吉岡黎明委員長から、昨年10月の百周年評価シンポジウムで発表された8委員会の報告内容をまとめた2冊の刊行を進めていると報告があった。
 またポ語版独自の農業編編纂も進められいるといい、森日本語版委員長からは「日本語版は歴史の記述が詳しい。ポ語版では現状把握が詳しい。両委員会の協力体制を作れないか」と呼びかけたのに対し、上原理事長は「2つの編纂委員会同士でもっと対話が必要。建設的な協力関係をめざしてほしい」と締めくくった。